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評者◆河田 宏
「大衆を発見」した尾崎秀樹は、大衆文学評論のジャンルを開拓した――刑死した兄を想い、ゾルゲ事件の究明に努めた軌跡を映し出す
荒野も歩めば径になる ロマンの猟人・尾崎秀樹の世界
峯島正行
No.2945 ・ 2009年12月12日




 本書の書評を書こうとしていた矢先、十一月十七日の朝日新聞朝刊「ひと」欄に古事記をセルビア語に翻訳し、日本翻訳家協会特別賞を受賞した山崎洋(六十八歳)が紹介されていた。山崎洋はゾルゲ事件で獄死したブランコ・ブーケリッチの子息なのである。
 ブーケリッチの遺骨も遺族も、事件後しばらく行方不明であった。消息がわかったのは、昭和三十九年に行われた尾崎秀樹等が主宰するゾルゲ・尾崎事件救援会の処刑二十年記念墓参会にブーケリッチの妻山崎淑子が初めて出席してからだ。そのとき洋は父の故郷ベオグラード大学に留学していた。『死と愛の書簡』(三一新書・一九九六年)によると「死ぬよりもつらいことを覚悟して洋や貴方のために生きようと決心した」とある。世間の目を避け、洋が自分の力で生きていけるようになるまで姿を見せなかったのだ。それほど世間の目はきびしかった。
●死刑判決を受けた兄
 本書は尾崎秀樹の伝記である。周知のように彼は終生ゾルゲ・尾崎事件の究明と顕彰に努めていた。異母兄秀実の事件が発表された中学二年生のときから続いているといってよい。昭和十七年(一九四二年)五月十七日、二十六歳も年上の兄秀実とゾルゲの「国際諜報団事件」が公表されてからである。
 兄がスパイ! 売国奴! 非国民! 戦時中、これほ...







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