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評者◆矢口進也
女中を主人公とした「加工小説」の味わいとは――「本歌取り」を小説に応用することは可能なのだろうか
女中譚
中島京子
No.2945 ・ 2009年12月12日




 これは「加工小説」とでもいうのだろうか。つまり原作として林芙美子、吉屋信子、永井荷風の女中を描いた小説があり、そのシチュエーションを借りて一人の女性が三つの場面に登場する連作に仕立てあげている。こういう「つくりかた」は何というのか。帯に「本歌取り」とあるが、短歌の場合のそれを小説に応用することが可能なのか。
 「ヒモの手紙」の主人公は女中の経験もあるが今は女給をしている。客の一人が付きまとい、あげく彼女の隣室が空いていたのをよいことに住みつき、何かと声をかけてくる。女に貢がせてのらくら暮らす「ヒモ」で、拝み倒せば金を工面する女がいるという。彼女に手紙を書けば拾円くらい送ってくるだろうから手紙を代筆してくれという。「それであたしは引き受けた」。
 この手紙の部分が原作の引用である。男もひどいが代筆する女も女。その手紙は、妙に高飛車に出て女が金を工面するのは当然のことといわんばかりだったり、逆に憐れみを買うように下手に出たり、あげく「君の身をいつも案じています」と情に訴えたりという調子。それでいて金はどうしても必要、と繰り返す。手紙にすぐ返事が来る。拾円は無理だとくどくど言い訳をする。そこでまた二回目の手紙を書く。冷たい女だ、とうらみごとを書きつらね、拾円くらい無理すれば用立て...







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