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評者◆近藤耕人
文学・哲学に底流する同性愛の美学によって創作の秘密が壮大に解き明かされる――プルーストによって導かれた魅惑的な読書案内が言葉遊びのユーモアを交えて語られる
プルースト逍遥 世界文学シュンポシオン
室井光広
五柳書院
No.2945 ・ 2009年12月12日




 日本のプルースト学者はフランスの学者に伍して文献学的業績を上げているが、語学者、作家、批評家でもある著者のこの書は、プルーストの魅力に発する該博な読書遍歴――それを室井氏は「逍遥[称揚・慫慂]」と呼ぶが――の語りであって、その過程で星座の如くつながる大作家、哲学者から同性愛的光を『失われた時を求めて』の深層に当て、そこに隠された真実を浮かび上がらせながら、プラトンに始まり、文学、哲学に底流する同性愛の美学によって創作の秘密を解き明かそうという壮大な試みである。
 室井氏が芥川賞を受賞して間もない頃、日本英文学会全国大会で北アイルランドのノーベル賞詩人、シェイマス・ヒーニーのシンポジウムの発表者の一人になったことがあった。氏はときどき会津の実家に帰り,一人で畑を守る母親を手伝って雑草を抜き、野菜を収穫しながら土に触れる手の感触のリアリティについて語った。それを聞いたある大学教授が,ここは真面目に研究した人が発表する場で、なんでそんな不真面目な話をしにきたのかと噛みついた。そこで私は立って、ヒーニーは泥炭を掘って掘って掘り抜いた素晴らしい詩を書いたのだと反駁し、室井氏を支持したことがあった。
 プルーストは知性よりも本能に王冠を授けたことを認めたが,室井氏自身は作家的本能よりも語学...







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