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評者◆伊達政保
やはり下北沢ならではの再開発反対運動――9月5・6日、「SHIMOKITA VOICE 2009」シンポジウムとライブ
No.2940 ・ 2009年11月07日




 四年前、世田谷区下北沢に町を南北に分断する道路と高層ビルによる、再開発計画が持ち上がった。これに反対する住民、商店主、店のマスターや、下北沢に縁のあるミュージシャン、映画・演劇人、作家やアーティストたちが、「下北沢商業者協議会」「Save the 下北沢」として、反対運動に立ち上がった。
 数年来、オイラの住む世田谷区は自民党の元都議会議長で建設業界出身の区長が就任してから、小田急線高架問題、住基ネット問題などで、高圧的な姿勢を示してきた。今回も住民の多くの反対意見にもかかわらず、東京都に対し「補助54号線」と駅前交通広場の事業認可を求めたのだ。地方自治体の長が業界の利権のために、必要もない再開発事業を推進するという、よくあるケースである。東京都はこれを認可し、区の審議会はこの計画案の強行採決を行なった。住民や商店主達は「まもれシモキタ!行政訴訟の会」を結成し、東京都に対し事業認可取り消しの裁判を起こした。
 9月5、6日の二日間、事業凍結と計画の見直しを求めるため、「SHIMOKITA VOICE 2009」と題して、先の住民三団体共催により、シンポジウムとライブが行なわれた。初日のシンポジウムは弁護士や前国立市長を交えて、開発計画の問題点や公共事業と市民運動、行政訴訟の現状等が論じられ、現在行なわれている工事は小田急の地下化工事であり、道路工事は用地買収を含め始まってはいない事が報告された。二日目のロング・シンポジウムは大学教授らをパネリストに、無駄な公共事業と日本の街づくりの問題点を指摘した。それに続き、個人経営店を取り巻く問題として、店主たちや住民たちが発言し、店と文化やコミュニティとの関わりついて討論がなされた。工事によってコミュニティが物理的に破壊される以前に、街としてのコミュニティが解体しつつあるのではないか、反対運動だけでなく運動を通してコミュニティの再構築も計っていこうという発言は、この運動の成熟を表していた。シンポジウムの最後に「下北沢を破壊する補助54号線および駅前ロータリーの予算凍結と高層再開発見直しを!」という鳩山新政権への要望決議が採択された。シンポジウムが参加者で超満員となったのも、これまでの運動の成果なのだと思う。
 二日とも、シンポジウムの後に、この運動に賛同するミュージシャン達、久土N茶谷、志田歩、大友良英グループ、反対運動のポスターも描いているリリー・フランキー、おおたか静流と梅津和時、渋さ知らズ等のライブが行われた。各ミュージック・シーンを代表するミュージシャンが、一堂に会するライブなんてめったにあるもんじゃない。やはり下北沢ならではだ。
(評論家)







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