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評者◆鴻農映二
二つの閔妃殺害シーン――映画『韓半島』と、新作『火花のように蝶のように』
No.2940 ・ 2009年11月07日




 私的な話から――。
 08年7月30日に、映画『いとしい人は遠きに』を観て、本紙の9月6日号に、そのレポートが掲載された。この作品は、映画批評家賞を受賞し、その授賞式が、プレスセンターで、11月5日に催された。その日の日記には、「スエちゃん、本人、見れた。二次会で握手」とだけ記してある。映画を観て、その主演女優に三ヵ月後に会えるなんて、無名の庶民の私としては、初めての出来事だ。二言、三言、言葉を身近でかわした彼女は髪を塔のように立て、授賞式の肩を露出した白いドレスから、シックな黒い衣装に着換えていた。握った手は、細く小さく柔らかかった。画面では地味な感じなのに、実物は、スターのオーラを放っていた。
 さて……。
 会ったことのあるスターの新作を観るのは、こういう気持ちかと、今年のお盆に合わせた映画『火花のように蝶のように』を観て感じた。閔妃役の彼女を護る警護役の男優に、すっかり、感情移入してしまった。「君のためなら、死ねる」。スエちゃんのためなら――。
 映画の筋は、閔妃が嫁ぐ前の、娘時代から話が始まり、そのとき知り合った船頭、実は裏の姿は殺しの請負人とプラトニックラブに陥る。船頭は、宮殿の警護兵になり、遂に閔妃殺害のため、宮殿に押し入った日本人らと対峙するのだった。
 このラストシーンは、以前、『韓半島』で女優、姜受延が演じた。与謝野鉄幹も、この襲撃に加わったともいわれるが、刺客集団を前に、「私は恐れる気持ちはない。私はこの国の国母だ」と言い放つスエの演技は、人の尊厳に目覚めさせてくれる。日本人としては観るのにつらい映画だが、乞う必覧だ。
(韓国文学)







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