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評者◆田中優子
遊郭と歌舞伎が手をたずさえながら江戸文化を創り上げる――活気が、飛び出す絵本のように「見えてくる」「聞こえてくる」
江戸演劇史(上)
渡辺保
江戸演劇史(下)
渡辺保
No.2939 ・ 2009年10月31日




 まことにわくわくする演劇史である。閉じたあともまた開きたくなるその魅力の一つは、まるで目の前に見えるかのような、演劇性であろう。そう、この本そのものが、約三〇〇年の時間を駆け足でめぐる長編の演劇、または映画のような作品なのだ。
 その演劇性は、他の歴史本には見られないいくつかの特徴で支えられている。ひとつは、個別のジャンルとして記述されてきた能、狂言、浄瑠璃、歌舞伎、音曲、舞踊、そして遊郭が、互いに深く関わり合いながら変化し、互いが互いを生み出し続けるその有機的な関係を書ききっていることである。たとえば、信長は能を愛したが、「同時に」幸若舞や風流踊を愛した。風流踊は傾き踊りの源である。また後陽成天皇の時代、宮中には能、狂言、踊、神楽、平家語り、様々な舞など四十九種もの芸能が参内した。能操りという、能を舞う人形も後陽成天皇は毎月のように招いたという。出雲のお国の「歌舞妓踊」も能狂言の様式でおこなわれていた。お国はその「歌舞妓踊」を、江戸城の本丸と西の丸の間でも踊ったのだった。劇場の外に広がるいくつもの場を含め、多様性にあふれた演劇状況が後の歌舞伎や浄瑠璃を生み出したのである。そのことが分類や系図をもってしてではなく、著者が描くシーンによって分かってくる。
 従来は、お国の傾き...







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