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評者◆ベイベー関根
バカで下品で最高なこの2冊、嫌われてもいいからススメたい。――東陽片岡『ステテコ行進曲』(本体一三〇〇円、青林工藝舎)、『ほどよい男たちのバラード』(本体一一〇〇円、秋田書店)
No.2938 ・ 2009年10月24日




 こないだ久しぶりにタコシェに行ってきたんだけどさ、いや~、今ミニコミが熱いね! コミケにも行ったこともないくせによくいうぜって感じだけど、こちとら二次創作とかビタイチ興味ないからさ。9月に出たものだけでも、『QOM』『トリコミックス』『山坂』と、もう珠玉の作品集ぞろいじゃんか! 個人的に肩入れしてるのは、実は『ゼンマイアタマ』なんだけど、いつまで経っても2号目が出やがらん。エモトさん、ハードコアばっかり聴いてないで、ちゃんとマンガ描け! つーか、だいたい森雅之が『ひるね物語』を自費出版してるってどういうことなの!? 小学館コノヤロー、単行本くらい出してやれよ!
 と、ミニコミ好きの血が沸いたり肉が躍ったりしたわけだが、今月のメインもやはりそこではない。
 いっや~、今までこの欄で東陽片岡を取り上げないでいて本当によかった! ついにその機会がベストのタイミングで訪れやがった! 『ステテコ行進曲』『ほどよい男たちのバラード』、相次いで出たこの2冊、もしこの欄を読んでる人が東陽片岡を知らなかったとしたら、是非・この組み合わせで・読んでほしい・頼んだぜ。頼まれても困るという人もいるかもしれないが、こちとら東陽片岡が東陽片岡になる前の『おゆき』『マルコメX』あたりからフォローしてるもんで(そういえば、これもタコシェで買ったな)、とにかく是が非でも・頼まれて・もらいたい。
 だってもう、とにかく素晴らしいんだよ。この執拗だがうるさくない描き込み、肉体を直撃する下品さ(というか正直さ)、現実をはるかに超えた下世話なキャラクターたち、爆笑必至のヒネリとオチ、どれをとっても一級品だ。
 それはいいけど、なんでこの2冊なの、って? よく訊いてくれた、今夜はあんたと乾杯だ。そう、この2冊が大事なんだよ。作者自身が街をウダウダ歩いたりスナックに行ったりするかたわら、ありえない人々との会話が平然と成立するエッセイ風の『ステテコ行進曲』、ホントにいるわけはないのに、このせこくて小汚い世界になじんでくると確かに自分の隣にいるとしか思えなくなるひとクセありすぎな野郎どもが跋扈する『ほどよい男たち…』、このふたつの方向を押さえなければ、東陽片岡を読んだことにはならんのだ。肝心なのは、東陽片岡がそのふたつの世界をまったく同じスタイルで描き、そしてまったく同じ強さの説得力をもたせてしまうってところで、これは誰にでもできるってえもんじゃない。
 つまり、現実をベースにしていながら、いつしかウソが侵入してくる『ステテコ』世界と、妄想が堂々と現実の中に居座ってしまう『ほどよい』世界、このふたつの世界のもつ方向が本質的に違わないということを、東陽片岡は絵で示しちゃってるわけだな。つーか、現実とウソの違いなんて、ワシャ関係ないもんね、という感じか。それにしてもこの描き込みで、もしページ単価が内田春菊より安かったら泣きが入るぜ、泣きが。
(セックスシンボル)







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