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評者◆鴻農映二
児童作家の二つの顔――洪性焄『夫を売りました』出版
No.2938 ・ 2009年10月24日




 児童文学者、洪性焄が面白い本を出した。九編の小説、一編の戯曲から成る、『夫を売りました』(図書出版 児童文学世界)だ。かれは、前著も、『父さんをお買いください』という奇抜なネーミングだったが、今度の表題作は、日本人としては、読みづらい内容だ。太平洋戦争中、徴用にとられた夫が、日本兵によって、殺害される。新妻は、夫の死を、「国に夫を売りました」と表現し、夫の血の代価として、祖国の解放がなされたと思おうとしている、というのだった。『父さんをお買い下さい』は、お互い孤児として育った男女が、生活も人心地つき自分らに欠けているのは親であるのに気づく。そして、不幸なお年寄りを親として迎え、孝行してみようという内容。これに対し、「父さんをお買い下さい」という広告を出した側は、孤独な金持ちで、気だてのよい応募者に財産を譲ろうとしていたのだった。
 このように、社会意識と、道徳観念の強いのが、作者の特徴だが、実は、それは作品においてであり、その人柄は、人を笑わせ、楽しませるのが日常茶飯事である。その片鱗をうかがわせるのが、新刊収録の「地下鉄で起きた出来事」で、これは、新しく完工した地下鉄九号線を祝い、擬人化した路線兄弟が語り合うもの。三号線がラップで、各駅を面白く歌い上げる。(漢字は違うが、韓国語の発音は同じという言葉遊び。カッコ内が実名)
 「映画関係者の好む駅は、開封駅(開峰駅)/女性らの好きな駅は、男性駅(南城駅)/政治家の好む駅は、新党駅(新堂駅)/赤ちゃんたちの好む駅は、授乳駅(水踰駅)/マラソンランナーが好きな駅は、月桂駅(月渓駅)/子どもの嫌う駅は、迷児駅(弥阿駅)/消防夫の嫌う駅は、放火駅(傍花駅)/三星グループの好きな駅は、三星駅(三成駅)」等々。
(韓国文学)







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