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評者◆秋竜山
ステキじゃないか、言葉、の巻
No.2935 ・ 2009年09月26日




 池上彰『わかりやすい〈伝える〉技術』(講談社現代新書、本体七四〇円)を読む。「ワッ!! 俺のことを書かれている!!」と、叫びたくなるような項目があった。〈使いたくない言葉――無意味な接続詞〉。問題は接続詞だ。接続詞を使わないと言葉がつながっていかない。だから、ひんぱんに使ってしまうことになってしまうのだ。
 〈わかりやすく伝えるうえで大事なこと。それは、「接続詞」を極力使わないことです。(略)安易な接続詞の使用は、論理的な文章作りの敵になります。「そして」「だから」を多用しますと、とりあえずは文章を書き綴ることが可能になります。話がつながっているようにみえるのです。しかし、本当にそうでしょうか。〉(本書より)
 たしかにそうだ。「そして」を使うと、その後に「だから」を使いたくなる。だから接続詞を安易というか絶対に使わないことにした……とか。〈「ところで」何なの?〉では、
 〈話をしているうちに、「ところで」という言葉をよく使う人がいます。口癖なのでしょう。ですが、ひんぱんに使われてしまいますと、困ってしまいます。「話があちこち飛んでいく」という印象を与えるからです。「ところで」という言葉は、「これまでの話はここまでにして、別の話題に転換するよ」という宣言です。〉(本書より)
 たしかにそうだ。「ところで」を使ってしまう。「お前、ところで、いったい何を話したいのだ」なんていわれてしまう。「ところで、話は違いますが」を、ひんぱんにやられては、相手も「話しは違わなくてもいい」と怒りたくなるだろう。
 〈仕事の場で「ところで」を使うのは、極端にいえば論理の「敗北」なのです。〉(本書より)
 「いや、俺は敗北などしていない!!」と、いったとしても「ところで」を使うからには「敗北」ということになってしまうのだろう。〈「話は変わるけど」は相手を否定〉では、
 〈相手と話していて、自分では話が盛り上がっていたと思っていたのに、相手が突然「話は変わるけど」と言うと、話の腰を折られた気がします。〉(本書より)
 これとて、使いたくなる言葉である。これも口癖なんだろう。どんどん話を変えていかなくては気がすまない。次から次へと変えられていく話につきあわなければならないと思うと、今度はこっちが負けてられない!! という気になってくる。相手が「話は変わるけど」という直前にこっちが「話は変わるけど」と、いうべきだろう。二人して、「話は変わるけど」を連発する。メチャクチャな会話になってしまうだろう。本書では、まだまだ続く。言葉というものは続けなくてはならない、そのためにも、たとえ、話は変わっても続行させねばならないのである。「そして」を使い続けて「だから」となり、「ところで」を数限りなく使う。これらの言葉について、気をつけなければいかんなァ!!と、自分を戒める。その時だけだ。すぐ忘れてしまう。肝心な時は忘れてしまっていて、ひとりポツンとしている時、フッと思い出すのである。そして、「気をつけなけれいかんなァ!!」なんて、つぶやく。その時だけで、またすぐ忘れてしまう。知識というものは、忘れてしまっては、なんにもならないということだ。でも、フッと思い出すからステキだ。







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