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評者◆編集部
こどもの本棚
No.2935 ・ 2009年09月26日
天使のめぐみが伝わる美しいお話の数々
▼聖書のなかの天使たち ▼メアリー・ジョスリン 文/エレナ・テンポリン 絵/女子パウロ会 訳 聖書には、神さまに賛美をささげる天使のお話がたくさんあります。そんなお話をあつめた絵本です。アダムとエバのお話もそのひとつ。エデンの園で、ふたりはわるい実をたべてしまいました。神さまは、善と悪がはげしくあらそう外の世界へと出ていくようにいいました。外に出たふたりがふりむくと、天使がだまったまま、きらめく剣をかざして空を切りさきました。 アダムとエバの子孫に、エサウとヤコブというふたごの兄弟がいました。ヤコブもまた、ながい旅に出されます。そして夢のなかで、天につうじる門をみました。わたしたちもまた、天使にかこまれて旅をしていることを思います。昔からのいのりがあります。「わたしの前を天使が行く。/わたしのうしろから 天使が来る。/わたしの上に 天使が舞う。/まわりを天使にかこまれて、/わたしは心やすらかに歩きつづける。」 絵本のさいごには、「ヨハネの黙示録」のお話があります。善と悪の大きなたたかいのあと、灰のなかから新しい天と地があらわれた。ヨハネが神さまから見せていただいたまぼろしです。天使と人間が神さまをたたえ、ともに歌うときが訪れたのです。天使のめぐみが伝わる美しいお話がつまっています。(5・7刊、B5変型判四八頁・本体一五〇〇円・女子パウロ会) 難病とたたかう6さいの女の子の絵本 ▼おひさまはいつもあったかいね ▼くさかはるか 詩/日下由美 文 2002年11月14日午前6時16分、はるかちゃんは生まれました。生後3にちめで、動脈管開存症という病気がわかりました。ふつうは閉じているはずの弁が開いたまま生まれてきたために、そこから流れでる血液の音が雑音としてきこえる病気です。治ったとおもったら、こんどはグルタル酸血症1型という、20万人にひとりの先天性の難病にかかっていることがわかり、お母さんは頭が真っ白になりました。 はるかちゃんは入退院をくりかえしました。ようちえんにもほとんど行けずじまい。いま6さいですが、入学した小学校にもまだいちども登校できていません。でも、そんな病院生活のなかで、はるかちゃんは詩と絵をかきはじめました。そうしてできあがったのがこの本です。採血がこわくてあばれるので、先生ははるかちゃんが寝ているうちに針をさしました。はるかちゃんはおこって詩をかきます。「あさいちは/いやって/いったのに/それでも/せんせいはやってくる」。 くらい顔をしていると治るものも治らない。はるかちゃんはかきました。「おおきく/なったら/はるかが/なおしてあげる/だいじななかまたち」「ないたり/わらったり/おこったり/みんな/いきてる」。病気にまけないことばがつまった絵本です。(9月刊、A5変型判八〇頁・本体一四〇〇円・偕成社) みなみのしまの ふしぎなおまじない ▼なぁんくくるん なぁんくくるん ▼中川まちこ 文/いまきみち 絵 ちいちゃんが起きると、おじいちゃんがいません。はまへおじいをむかえにいこう。ちいちゃんはずんずんあるきだしました。すると、道のまんなかに、牛がすわっているじゃないですか。そしてこっちへ、のっそり、のっそり。ちいちゃんはびっくりして引きかえしてしまう。しりあいのおじちゃんが、そばにあった木のえだを折って「なぁんくくるん、なぁんくくるん」とおまじないをかけて、ちいちゃんに持たせました。 ちいちゃんはそれをもって、牛にちかづきながら、「なぁんくくるん なぁんくくるん」とつぶやいて木のえだをふりまわし、牛をすりぬけました。そしてやっとのことで、うみにたどりつきました。 「おじぃー、つめたい おちゃ、もってきたよー」。ちいちゃんがさけびます。おじいはうみでさかなをとっていました。 ちいちゃんは、おじいのふねにのせてもらいました。そして、おじいと、もってきたつめたいお茶をのみました。すると、もっていた木のえだに、たこがまきついてくるじゃありませんか。「これは あげないよ。なぁんくくるんの おまもりだからね」。おじいは枝をみて、「サカキの えだだぁ」といって、たのしそうにわらいました。みなみのしまの、ふしぎなおまじないのおはなし。(8月刊、B5変型判三二頁・本体一二〇〇円・そうえん社) よわむしおばけが こわごわ地獄をゆく ▼おばけぼうやの みずじごく うたうためぐり ▼川北亮司 文/中谷靖彦 絵 よわむしおばけは、お墓のみちをとおるのがこわくてしかたがありません。だまってあるくとこわいので、おおきな声でうたいます。すると、じめんが割れて、えんまくんがとびだしてきていいました。「おばけが おばけを こわがるなんて、ゆるせない! おまえみたいな よわむしは、みずじごくめぐりでしゅぎょうしてこい!」 よわむしおばけは、じめんの割れめに落っこちていきました。すると、おおきな滝があって、そこには、べろべろばあやがいました。そして、つかまってしまったのです。 「まあ、かわいい。かわいい こどもは、あまくて おいしいんじゃがな。ほれ、べろべろべろ……」 やっとのことで、よわむしおばけはそこをのがれて、ゆきとかぜがふきあれる、さむいところに着きました。どこからか、ゆきむすめのうたごえがきこえてきます。「ゆきが しんしん ふるふる よるに/なきなき かえった やまの みち」。 ゆきむすめについていくと、おんせんじごくがありました。湯気のおくから、おそろしい音がきこえます。ろくろっくびが、とびだしてきました。ゆきむすめがうたうと、おんせんじごくは、ほんとうのおんせんになりました。よわむしおばけをかこんで、みんなでお湯につかって、いいきもち。でも、よわむしおばけは、やっぱりよわむし。(6・29刊、B5変型版三二頁・本体一二〇〇円・くもん出版) 韓国と日本をむすぶデザインと詩の世界 ▼あなたが愛しいだけです ▼金永植 詩・絵 金永植さんは釜山にうまれ、日本の大学でもまなんだデザイン画家です。はじめて日本語をまなんだのは、高校生のとき。日本語と韓国語の語順がほぼおなじことに、したしみをおぼえたそうです。嶺南大学の美術科にすすんだ金さんは、日本の雑誌をぐうぜんめにしました。ないようがとてもすてきで、あたらしい経験になったといいます。それがきっかけで、日本に留学することになったのです。 日本では造形と人間の心理との関係について学びました。そして、造形言語という概念に関心をもって、研究をはじめたのでした。そうしてできた作品集がこの本です。 本をひらくと、デザインとことばが一覧できるようにおさめられています。「情け深くありたい/分かち合いたくありたい/温かくありたい」。かたわらには、ハートのかたちをした葉っぱのような頭で、線のようなひとがふたり、よりそっています。 「純粋さがこころになければ常に空腹である」「美しくないゲームからは手を引こう」「絵の中の色は/絵の外の明るさによって果てしなく変わる」「未完成の料理はお客に出せない」。そんなことばのかずかずと、デザインが交響します。広げてはながめ、ことばをかみしめる。韓国と日本をむすぶ、そんな詩画集です。(8・15刊、四六変型判一九二頁・本体二〇〇〇円・新幹社) |
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