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評者◆秋竜山
マンガの文字でなくては、の巻
No.2934 ・ 2009年09月19日




 俳句は、ウンウンうなりながら、ひねるものだ。そして、ひらめく。それを、片手に持った短冊に、もう一つの片手に持った毛筆でサラサラと、ミミズがのたくったような文字を上から下へと書く。英語の俳句が流行しているようだが、短冊を横に持つのだろうか。そして英語をミミズがのたくったように左から右へと流すのだろうか。いや、まてよ、日本語もタテばかりではなく、ヨコの日本語だってあるぞ。昔のヨコの日本語は右から左へと流したものだが、今は英語と同じように左から右である。どうして逆にしてしまったのか、それなりの理由があるだろう。そして、まだあらわれないのが、下から上へと読む文章であるということだ。文字は言葉であるから、文字もさることながら、言葉を逆に喋るということは、いつの時代かやってくるのか、こないのか。以前、漫才で逆に喋って笑わせていたのがあったが、長続きはしなかったようだ。さて、「書」というものを面白い眼でとらえた我らの石川九楊さんが、「書の見かたが変った」と、思わせてくれる本を出した。ブ厚い。七百数十ページからなり、片手では持てない。両手を使わなくては持ち上げることができない。文庫慣れしている者にとっては、これをどのようにして片手に持って読むか思案にくれるというものだ。石川九楊『近代書史』(名古屋大学出版会、本体一八〇〇〇円)という、相当重い本だ。地震の時書棚から落っこちて頭へでも命中したら、この一冊だけで大ケガをしてしまうかもしれない。このような本は書棚の一番下へ並べて置くべし、である。値段にもビックリしてしまうが、一冊千円の本を一八冊がまんすれば買えてしまうだろう。
 〈近代書史の不在を書道界や周辺の研究者の怠惰のせいにするのはやさしいが、実はそれだけでは済まないもっと深刻な問題が、近代という時間、空間の中での書というものの位置の占め方のうちに隠れている。そして日本の近代という時空の中を特殊に歩んだ書というものへの解読法が間違っていることに起因して、近代書史を読み解く方法がうまく見つけ出されていないのである。〉(本書より)
 私のもっとも関心というか、まず、ここから読まなくてはならないだろうというのが〈丸文字・シャープ文字・現代金釘流――一九七〇年代半ば以降の筆記体〉であった。
 〈敗戦後、一九七〇年代半ばから、生活日常における筆記体の文字に著しい変貌が見られるようになった。七〇年代半ばから九〇年頃には、いわゆる「丸文字」が少女たちの間に広範囲に見られるようになり、また八〇年代半ばから二〇〇〇年頃にかけては、直線的な筆直からなる細身の「シャープ文字」が確認され、九〇年代半ば頃からは、「現代金釘流」とでもいうべきたどたどしい文字が蔓延し始めた。〉(本書より)
 一般的に「丸文字」をマンガ文字というが、マンガ文字のすべてが「丸文字」とはいえないだろう。
 〈長谷川町子の「サザエさん」も白土三平の「カムイ伝」も「丸文字」で描かれていたわけではなく、〉(本書より)
 つまり、は。マンガのふき出しの文字については、すべてマンガ文字といえるだろう。マンガのキャラクターが喋るのだからマンガの文字でなくてはいかんだろう。写真の人物に喋らせたら写真文字なのか。







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