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評者◆伊達政保
オイラの行動指針としての平岡正明――あの激動の昭和40年代の文化革命と並走しアジテイトした「ジャズ評論家」
No.2934 ・ 2009年09月19日




 平岡正明氏が7月9日に亡くなった。オイラにとっては師匠とも言うべき、いや師匠である人物だった。晩年は落語や大道芸などを中心とした芸能評論家、あるいは音楽評論家として知られることとなったが、あの激動の昭和40年代に並走して行動した、活動家、「ジャズ評論家」であったことを忘れてはならない。
 60年安保闘争から活動を開始、その後共産主義者同盟の分裂後、犯罪者同盟を結成、その名を知られることとなる。嵐山光三郎は自伝的小説『口笛の歌が聴こえる』の中で「当時、東京の学生たちの話題をさらっていたのは、革共同の第三次分裂と、犯罪者同盟だった。首謀者は平岡正明、宮原安春といった連中だった。いずれもフツーの学生からは一目置かれている特権的スター学生」と書いている。その後、処女評論集『韃靼人宣言』を出版し、最年少評論家としてデビュー。硬直したマルクス・レーニン主義思想を、ジャズとシュールレアリズム的方法論などを用いて解放しようとしたものであった。
 昭和40年代に入ると、松田政男から「ここを通過しない限り、ヤンガー・ゼネレーションは、秘密結社だの、陰謀だの、むろん、革命だのについて語ってはならない」と絶賛された第二評論集『犯罪あるいは革命に関する諸章』を出版。ここに平岡正明のその後が全て出揃っていると言っても過言ではない。革命、犯罪、闇市、座頭市、ジャズが論じられ、後に窮民革命論となる内容もすでに展開されていた。その運動論、組織論は、独自の文体と共にまさにジャズ的としか言い様がないものだった。
 その出版に先立つこと数か月、昭和42年6月に「ジャズ批評」が創刊された。その巻頭に「どんな感情をもつことでも、感情をもつことは、つねに、絶対的に、ただしい」と始まる「ジャズ宣言」が掲載され(奇しくも今年7月「ジャズ批評」150号記念特別号は創刊号を復刻掲載)、ジャズを第三世界の思想として聴き、そして行動せよと激烈に迫るその文章は、10・8羽田闘争から始まる激動する時代状況へのアジテーションでもあった。昭和44年、評論集『ジャズ宣言』が出版された。それと同時に、山下洋輔トリオが結成され、怒濤の進撃を開始していった(平岡氏死後の7月19日、結成40周年記念コンサートが日比谷野音で行われた)。ジャズや映画やアングラを論じた平岡正明の文章は、昭和40年代文化革命と並走しアジテイトしていったのだ。
 その後、竹中労、太田竜と三バカを結成。衰退する新左翼思想に窮民革命論で活を入れることとなる。そうした中、オイラ行動指針としての平岡正明を読み続けていったのだ。合掌。
(評論家)







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