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評者◆秋竜山
無人島マンガの独り言、の巻
No.2933 ・ 2009年09月12日




 「なぜ、こんなことになってしまったのか」と、自分に問う。それは、「無人島マンガ」にある。無人島マンガを描き続けている。描き上げたものは作品となるのだろうか。それが発表されようがされまいがの作品となるのだ。「なぜ」と、いえば、つまりは、「こんなことになってしまったから」である。それは私にとっての大きな「意地」でもあるような気もする。「好きだ」からということもあったが、その一段上の「意地」に昇格したようなおももちだ。目標一万点などということになっている。「どの程度すすんだかね」なんて知る人に聞かれたりすると、「好きだ」でやっているでは対応できない。「意地」を持つことこそが、次の一枚へと闘志がわくのである。浜田正『バカと言われないための哲学入門』(中経文庫、本体五五二円)で、〈第2章「他者」との関係をどう作るのか〉には、それぞれの項目があり、その中、〈コミュニケーション――ハーバーマス〉というのがある。〈ハーバーマス……コミュニケーションとは「合意」を目指すこと〉とある。無人島マンガを描きながら、無人島マンガこそコミュニケーション・マンガではなかろうかと思えてきたりする。絶海の孤島でタタミ一枚か二枚ぐらいの面積、なぜかヤシの木が一本。無人島であるから、その孤島に人間の姿がなくて当り前であり、もし、一人でも人間がいたら無人島とはいえないだろう、なんて意見もある。孤島だけを描き、そこには人間の影さえない。そして、「キャプション」を「無人島」とした。そういうマンガがあってもいいわけだ。まだ、そのようなマンガは見たこともないが、きっと誰かが描いているだろうと、今さらそのような作品を描いてみても……という思いがあって、他の誰もが手掛けない。そのようなマンガは最初のやったもの勝ちであって、二枚目は通用しないだろう。「無人島マンガ」には必ず人間がいる。人数には制限なしだ。一人でも二人でも三人でも百人?でもかまわない。たいていが一人だ。本書の〈コミュニケーション〉を読みながら、無人島マンガはコミュニケーションによって成り立っていると思える。
 〈わたしたちの日常のコミュニケーションは、「発話行為」から成り立っています。ハーバーマスによれば、このコミュニケーションこそが人間を人間たらしめているのです。〉(本書より)
 それはよくわかる。そして、〈「発話行為」は独り言ではありません。必ず相手がいます。(略)コミュニケーションは紆余曲折があるにしろ、「合意を目指すプロセス」といえます。この「合意を目指す」コミュニケーションがハーバーマスの言う「コミュニケーション的行為」です。〉と、いう。面白いのは〈では、独り言の場合はどうでしょうか。〉ということだ。
 〈たとえば、あなたがテレビや新聞に向って、話しかけているとします。自分ではテレビや新聞のなかの誰かに向って話しているつもりでも、実は「わたしの耳」がその声を聞く役割を演じているのです。(略)いわば、もう一人の「内なるわたし」に話しかけているのです。〉(本書より)
 「いや、内なるわたしに話しかけてなどいないし、わたしの耳は聞いていない」などといっても駄目だ。無人島マンガには独り言が多い。









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