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評者◆秋竜山
脳ほど面白いものはない、の巻
No.2932 ・ 2009年09月05日




 男っぽい女、とか、女っぽい男、がいるものだ。どっちだかわからないのもいたりする。その場合、どうなるのだろうか。茂木健一郎『化粧する脳』(集英社新書、本体六八〇円)に、〈男性脳と女性脳〉という項目があり、考えてしまった。まず、自分の脳はどうなっているのだろうか。私は、まぎれもなく男性である。男っぽいとはいえないだろう。女っぽいともいえないだろう。では、どっちだかわからないということになるのか。他人がみて、男性であることはたしかである。男性であるからには、男性脳の持ち主といっても間違いなかろう、と、安心できるものだろうか(はっきりいって、どっちでもいいことだが)。でも、本書を読みながら、フッと思ってしまったのである。脳は、「安心しろ、男性脳だから」なんて決断してくれないものである。このようなことは自分の脳にはわからないのだろうか。〈脳には男女差がある。何が違いかというと、女性のほうが共感能力に関しては髙い傾向がある。もちろん、このことには個体差があり、ようするに共感指数を示すガウス分布の山が男性よりも女性のほうが髙いという意味である。ある個人を比較すれば当然逆もあり得る。(略)一般的には、女性のほうが人間関係やコミュニケーションに依拠した行動をとることが多く、したがって共感能力や周囲に対する同調能力が髙いと考えられている。〉(本書より)
 やっぱり自分は、男性脳であるかもしれないと、この一文を読んだ限りにおいて、一応脳にいって聞かせる。
 〈男性はどうかというと、抽象的、論理的思考が強く、システムを分析・検討し、そのパターンを支配する隠れた規則を探り出そうとする衝動、システムを構築しようとする傾向にあるという研究もある〉(「共感する女脳、システム化する男脳」サイモン・バロン=コーエン著、三宅真砂子訳、日本放送出版協会、二〇〇五)。もちろん、これはあくまでも傾向であって、共感能力に長けた男性もいるし、システム化を得意とする女性もいるだろう。〉(本書より)
 個人差というものがある。なんとも便利な言葉だ。すべての男と女、すべて個人差によって成り立っているだろう。脳の違いによっても個人差。頭のいい人、悪い人も個人差があり、文句のいえないものである。どうして、こんな脳にうまれてしまったんだ!!と、親をせめるわけにはいかない。
 〈「人は女として生まれてくるのではない。女になるのだ。」というものもある。シモーヌ・ド・ボーヴォワールが「第二の性」において述べた言葉である。〉(本書より)
 という。「人は男として生まれてくるのではない。男になるのだ」なんていってみても、男ってなんて野暮くさくて名言になりもしない。
 〈女性はどちらかといえば自分自身の価値基準や独断で世の中を闊歩しようというより、周りの人と同調し、また自分がどうみられているかという他者の視線を自己の成り立ちに反映させることを大事にしながら、社会と折り合いをつけて生きていこうとしている。〉(本書より)
 これとても、個人差があって、男性の頭の中に同じような脳を持っていたりするものだ。脳ほど面白いものはない。個人差があるからだ。







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