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評者◆三島憲一
究極の神秘主義――ローゼンツヴァイクは、危機の中でモラルの回復を説くお説教家ではない F・ローゼンツヴァイク『救済の星』を読む
救済の星
フランツ・ローゼンツヴァイク 著, 村岡晋一・細見和之・小須田健 訳
No.2928 ・ 2009年08月01日




 ユダヤ神秘主義の研究で知られるショーレムは、『カバラとその象徴的表現』のなかで「歴史的現象としての神秘主義は危機の産物である」と書いている。ローゼンツヴァイクの『救済の星』には、まさにこの言葉がぴったりあてはまる。
 第一次世界大戦という危機の時代に、バルカンの最前線で本書は書き始められた。正式には「ユダヤ信仰を持ったドイツ帝国市民」という法的ステータスでカッセルに生まれた著者フランツ・ローゼンツヴァイクは、大戦前にキリスト教への改宗も考えるが、結局はユダヤ教に留まり、大戦開始とともに応召した。多くのユダヤ人は、ドイツ市民として認められる絶好の機会と考えていさんで参戦した時代である。
 ユダヤ教の神をめぐって、神と人間の相聞をめぐって、そして啓示と救済をめぐって展開される本書は、500ページを越える大著。中味は究極の神秘主義である。「神はさしあたりひとつの〈無〉、神の〈無〉である」(訳書34ページ、以下数字のみ記す)とか、「われわれは一にして普遍的な〈無〉にはいっさい関心がない」(36)といったとりあえずは理解不能なことばが乱数表のように次から次へと紡ぎ出されて来る――これが神秘主義でなくてなんであろう。
 今引いた文章は、危機にあたって陥りがちな否定神学の拒絶を意味している...







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