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評者◆秋竜山
「スミマセンでした(涙)」、の巻
No.2922 ・ 2009年06月20日




 本を買う理由。本のタイトルで買わされてしまうということか。重松清・茂木健一郎対談『涙の理由――人はなぜ涙を流すのか』(宝島社、本体一一四三円)は、タイトルが気にいったから買った本、ということになるのか。本を買う動機は何かしらの理由というものがあるはずだ。理由なく買うということもあるかもしれないけど、ね。〈小説家と脳学者が涙について考えた「涙を流すとき、脳では何が起こっているんだろう」〉というオビ。対談にはお互いに対話しながら言葉の始めとか終りとか中途とかに(笑)という文字がある。笑っていることを表わしているわけだ。(大笑)とか(苦笑)とか、さまざまな笑いがある。これによって対談の様子が想像できたりするものだ。(泣)という文字はあまりみかけない。〈涙の理由〉というテーマであるから、(涙)などという文字があったらテーマにピッタリの対談になるのだろうが、涙する理由もないのに(涙)も変だ。もし、(涙)がひんぱんに出てきたらどーなるか。そんな本を読んでみたいものだと考えた。試みとして自分で勝手に(涙)を入れてみた。エンピツで。後で消すためである。消せなくては本を駄目にしてしまうからだ。やっぱり不思議な対談本になった。もし、(笑)ばかりであっても変てこな本になってしまうだろう。
 〈茂木‥「ラフ・トラック」を発明したアメリカのプロデューサーは、コメディ番組で、笑い声をかぶせると聴衆がより笑うため、笑いが集団的な現象であることを見つけましたが、イギリスのコメディ「リトル・ブリテン」のマット・ルーカスとデヴィッド・ウォリアムスに聞くと、彼らはもう少し手の込んだことをやっている。機械的に笑い声を入れるというより、一度ショーを作って粗編集して、それをスタジオで見せて、その笑い声を録音したものをかぶせて放送しているそうです。(略)皆で笑いを共有しているかのような雰囲気を出したほうが効果的だということは、現場レベルではわかっている。〉〈「共感回路」が脳の前頭葉にあるので、笑いに限らずどんな感情でも伝播します。笑いは、もともと集団のダイナミックスに関わっていて社会的な意味しかないと言われている。(略)笑いが感染することは、進化の過程で説明できる。〉(本書より)
 よく「もらい泣き」というのがある。「もらい笑い」というだろうか。「つられ笑い」というのか。ホント泣きとウソ泣きがある。女性はウソ泣きの名人である。男は女のウソ泣きにはいつもだまされるようだ。たとえウソ泣きとわかっていても、ついついだまされてしまうのは誰でもある。女性のウソ泣きはゆるすとしても、男性のウソ泣きはゆるせない。ところが、近年、やたらと男がウソ泣きをするようになってしまったようだ。いい例が、テレビのニュースなどで男が一列に並んで頭を下げて「スミマセンでした」などという。その時、泣いてはいないが、ウソペコリである。みんな、それをわかっている。「あれはホントにあやまっていないよ」なんて、みんな思っている。女性が一列に並んで頭を下げたらどーなるか。まだ一度も見たことがない。一斉にウソ泣きかホント泣きかしらないが、泣くかもしれない。







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