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評者◆秋竜山
昔のバカはよかったなァ、の巻
No.2921 ・ 2009年06月13日




 バカだから書ける本と、バカでは書けない本、がある。バカ本は、バカでは書けないだろう。和田秀樹『バカとは何か』(幻冬舎新書、本体七二〇円)を読む。
 〈はじめに断っておくと、本書はバカをバカにするために書かれた本でなく、バカは治るという立場から、バカとは何かをともに考え、それに当てはまっている場合、それに気づくことで、少しでもバカ状態を脱却していこうという趣旨で書かれた本である。〉(本書、序より)
 そして、〈バカと言われたくない人にとっては、本書は役に立てると信じているし、それがうまくいくと、人生は必ず得をすると言いたいのである。〉と、いうわけだ。自分がリコウだと思っている人にとっては読む必要がなさそうだ。自分はバカだと思っている人も他人から、バカだ!!と言われると腹が立つのはどういうわけか。そして、肝心なのは〈バカは治るか、治すべきか〉である。それを本書では、〈バカが多面的であるということと、もう一つ本書で提示したいことは、バカは原則的に治るということである。逆に治らない状態に対してはバカということばは使わないし、使うべきではない。「バカにつける薬はない」とよく言うが、精神科医の立場からすると、薬で治すような状態についても、たとえば統合失調症やうつ病についてもバカと言うべきではない。結局のところ、バカというのは、生き方や考え方や態度の問題が大きいのだと私は考えている。〉と、いうわけだ。もし、「バカにつける薬」というものが開発されたら、誰もが一度は飲んでみるだろう。「私はリコウだから飲む必要はない」と、思っている人も、こっそり飲んでみたりする。「バカにつける薬」というネーミングの特許のようなものは取られているだろうか。もし、取られていないとしたら今の内だ。しかし、わからない。世の中にはバカが多いから、考えることは同じで、特許ズミになっているかもしれない。まてよ!!バカというかリコウな人間のやりそうなことなのか。
 〈バカとリコウというのは、二分法のものではなく、スペクトラムのようなものだということだ。バカでなければリコウ、リコウでなければバカというような考え方は、それこそ前述の二分割思考そのものであって、バカな考え方なのである。〉(本書より)
 そして、〈バカは悪循環する〉というのだ。
 〈バカの悪循環を脱するには、バカのやり方を変えるしかないし、リコウのやり方を盗めれば多くの場合、並の人よりはリコウになれる。騙されたと思って――騙されることをプライドが許さず、人の話を素直に信じられないのもバカの一種である――、リコウのやり方を信じてみるのもバカ脱却の第一歩である。〉(本書より)
 そして、〈時代が変わるとバカも変わる〉というのである。〈二十一世紀におけるバカ〉というのもうまれる。と、なるとすぐ老人は言いたがる。「昔はよかった」と。要するに「昔のバカはよかった」ということか。「平成のバカにくらべると昭和のバカはよかったなァ」ということになるだろう。もちろん「平成のリコウより昭和のリコウのほうがよかった」ということになるだろう。世の中は「リコウ」と「バカ」ばっかりである。







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