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評者◆ベイベー関根
大器ふたり(ふたつ?)、あるいは渡辺ペコの鑑識眼が高いことについて――大橋裕之『音楽と漫画』(本体九五二円、太田出版)、河内遥『ケーキを買いに』(本体九五二円、太田出版)、『チルヒ』(本体九三三円、小池書院)
No.2921 ・ 2009年06月13日




 ぼやぼやしている間にいろいろあったような気もするが、おおかた忘れちまったなあ。メビウス? ああそうだった、しかし今日本で読める翻訳が1冊もないのに招聘するとはいい度胸だよなあ。
 さて、それはともかく、今月はいいタマがふたつ入りやしたぜ!
 ひとりめは、吉祥寺とQJ方面ではすでに有名な新人、大橋裕之だ!
 2006年から自費出版で完全個人マンガ雑誌『週刊オオハシ』を発行し続ける(とはいっても、もちろん週刊ではない。現在9号まで刊)ストリート・ファイティング・ナイスガイ大橋だが、そういわれても彼のマンガを初めて見る人は目が点になること必定だ。何せヘタすぎるのだ! というか、イタズラ書きなのだ! というか、そうとしか見えないのだ! しかし、読みはじめるや否やグイグイと作品世界に引きずり込まれ、当初拙劣に見えた絵すら「いやこれ……アリなんじゃない?」と思わせる魔力が大橋マンガにはある。一見デタラメに見えながら緻密に計算されたストーリーテリングが、ふと人生の曲がり角に立っちゃった人の哀しさと可笑しさを同時にえぐるのだ。嘘だと思ったら読んでみな! 感動した人には、タコシェかバサラブックスに行って、大橋作品集をコンプすることを強くお薦めする。
 ただし、デザインと帯は気にいらねーな! ついでにいうと、作品選択も過去の感動作に偏り過ぎで、もっとスコーンと抜けたのが入ってないとバランスとれまへんがな!
 さあ、続いてまいりましょう、ふたりめは「マンガ界のアンファン・テリブル」(っていったの他の人っす)河内遥だ!
 2000年『アックス』でデビュー(!)、『幻燈』とかにも作品を発表しながら、一方ではOL奮闘記までものする、媒体とテーマを選ばぬ天才苦労人河内が、いよいよ単行本を出す! しかも4社から1冊ずつ! この原稿を書いてる時点で出てるのは、ヘンタイ短編集『ケーキを買いに』と時代短編集『チルヒ』の2冊だが、それだけでも溢れる才能を見誤る者はいまい。よく練られた暖かい物語、べらぼうに巧いが厭味じゃない絵、そしてオリジナルきわまりないツイスト、いやもうほかに何を望もうか。
 まあ、目につきやすいのはヘンタイもの『ケーキを買いに』の方かな。ピンポイントでエロのツボを突いてくるほか、それぞれの短篇をつなげる工夫もあって楽しいけれど、一見地味めな『チルヒ』の方も、編集者の苦労が結実した実に重厚な味わいなり。とにかく『ラブメイク』(前述のOLもの)、『へび苺の缶詰』(少女マンガからガロ系まで網羅したもので、こりゃ面白そうだ!)4冊とも買わなきゃこの梅雨は越せまいぞ!
 ところで、このふたりの作家には共通点がある。太田出版から本が出るというのもそうなんだけど、面白いのはいち早く渡辺ペコが推していることで、ペコ先生、さすがにお目が高い!








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