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評者◆鴻農映二
韓国の定型詩「時調」、その初の邦訳個人詩集
千年のともしび
車敬燮
No.2919 ・ 2009年05月30日




 日本には、定型詩として、俳句と短歌がある。最近は、これに五行歌が加わったようだが、韓国の定型詩で、いまも脈打っているのは時調だ。
 この形式については、既に、尹学準氏の『朝鮮の詩ごころ』(講談社学術文庫)等の紹介書が、邦訳何冊かある。だが、現代の時調詩人の、個人邦訳詩集は、まだ世に出ていないのではないだろうか?
 今回、それを担当することになった。即ち、車敬燮の『千年のともしび』が、それだ。一首のみの作品五十編と、五首の連歌形式十五編の、計六十五編から成る。
 車詩人は、一言でいうと、「世を憂うる詩人」だ。金芝河の『五賊』のスタンスと基本的には同じだが、伝統主義者・保守主義者なので、その謂は、随分、印象が異なる。
 たとえば、こんな感じだ。

いまは 良家の村 古顔の人 消え去り
久しい 生活文化 衣食住も 変わって
煤のような世界に ゆらめく 忍冬草よ
―人生別曲(14)―

いまも 暗い夜を もて遊ぶ 狼がおり
御殿の 贈り物も 色褪せた 時代ゆえ
叩き売り 二重契約 転売の行 のさばる
―人生別曲(15)―

 このような時調詩人が、韓国には、約七四〇人いる(文人協会の名簿より)。現代詩の書き手は、約五〇〇〇人なので、劣勢だが、この詩型が、本当に民族の生理と合致したものなら、そのうち、俵万智のような人材も出ることだろう。強い政治意識と、ロジック、それに一抹の感傷が、時調の特徴だが、短歌より十二字多いこの詩型を自在に操る書き手の登場が、待たれる。とすると、車詩人は、イエスに先行する預言者のような存在かも――。
(韓国文学)







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