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評者◆秋竜山
文学者だって変態である、の巻
No.2918 ・ 2009年05月23日




 その昔、〈エンタツ・アチャコ〉という漫才コンビがいた。現代の漫才の元祖といっていいだろう。〈ヤス・キヨ〉漫才が伝説となってしまったが、もっともっと古くから漫才があった。漫才だからコンビによって成り立つ。〈エンタツ・アチャコ〉の漫才も、利口と馬鹿が運よく出会った時、生まれたのである。それ以来、漫才というものは利口と馬鹿でなくてはコンビを組めないようになってしまったのである。今の漫才をみると笑わせてくれる漫才のすべては利口と馬鹿の実にくだらない会話によってである。笑いというものは、こーでなくてはいかんのか? と、フッと思わせてしまう程、馬鹿げた会話だ。馬鹿げた会話だから馬鹿の二人が話すべきものなのか、最初漫才を考えた人は、そー思ったのに違いなかろう。ところが、それではちっとも笑えない。利口が必要であることを発見したのだ。利口と馬鹿が二人並んで舞台に立った時、もうそれだけで笑えてきてしまうのが漫才という芸能である。そして今、大いに笑わせてくれるのが、爆笑問題である。コンビ名は人をくったような名前ではあるが、個人名(芸名)は普通の名前である。太田光、田中裕二というちっとも面白くないような名前だ。エンタツ・アチャコとくらべたらの話だが……。爆笑問題『日本文学者変態論』(幻冬舎、本体一四〇〇)は、爆笑問題の漫才を活字でみるといったものだ。二四名からなる日本文学を代表するような文学者を漫才にしたてあげている。その方法論としては、エンタツ・アチャコ的であるが、漫才というものは、そーならざるものがあるだろうから文句のいいようもない。要は面白ければよいのであって、笑わせてくれれば充分である。さすが、現代の人気漫才師である、現代的に笑わせてくれる。活字で笑わせてくれるのだから、両者の馬鹿と利口のチョーチョーハッシの喋べくりだったらもっと笑わせてくれるだろう。川端康成では、
 〈太田――今生きていたら、絶対に浅草サンバカーニバルとか大好きだろうな。浅草と踊子という大好きなものが二つ重ってるんだから。
田中――そうかもしれないけど、いいよ、そんなこと想像しなくて!一高入学の翌年、伊豆に8日間の一人旅に出るんだ。この旅が川端の人生を決定づけたといってもいいんじゃないかな。
太田――やっぱり伊豆急の〝踊り子号〟で行ったのかな?
田中――どう考えても順番が逆だろ!この旅先で、川端は旅芸人と知り合い道連れになる。この時の経験が後の「伊豆の踊子」になる。
 (略)
太田――その時の旅館で食べた料理を題材にした作品もいいんだよな。
田中――なんだよ、それ?
太田――「伊豆の躍り食い」。
田中――そんなのねえよ!(略)〉(本書より)
 漫才を聞いていると、利口が馬鹿を笑うのか、馬鹿が利口を笑うのかわからなくなってしまう。そして、笑っている自分はどっちの部類に属する人間なのか。文学者ばかりが変態ではなく、人間すべて変態であるなんていうと本物の変態がマネすんな!!と、おこるかもしれない。







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