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評者◆平野啓一郎
生きようとする人間の力――入念な叡智のかたちを手触りとともに実感させる:M・エリアーデ『迷宮の試煉』を読む
迷宮の試煉――エリアーデ自らを語る
ミルチャ・エリアーデ著、クロード=アンリ・ロケ聞き手、住谷春也訳 
No.2918 ・ 2009年05月23日




 ミルチャ・エリアーデの圧倒的な影響の下、『日蝕』という小説を書いてデビューした私は、それから10年を経て、彼の言葉で言うならば、徹底して「脱聖化」された、「歴史のテロル」としての〈悪〉と向き合うつもりで、『決壊』という作品を発表した。
 この小説のために私が採用したアプローチは極めてストイックなもので、その倫理的な必然を今でも信じてはいるが、他方で、作家としての自分の中に、イマジネーションの領域への飢餓感が膨らんでいたことも強く感じていて、昨年、映画『コッポラの胡蝶の夢』(原作『若さなき若さ』)を見た頃から、またエリアーデを読み返したいという気持ちになっていた。
 丁度そんな折に、未読だった本書『迷宮の試煉』の翻訳が刊行されることとなり、私は机に囓りついて夢中でページを捲り、偉大な魂との再会に、久しぶりに心底感動した。読書というのは、やっぱりこうでなければとつくづく思う。
 個人的な思い入れはさておき、昨年来の「未曾有の経済危機」下で読むエリアーデの思想は、殺伐としたこの世界に、力強い、晴れやかな希望の光を投げかけているように感じられた。誰か、この金融危機をジョルジュ・バタイユの〈蕩尽〉という概念で説明した人がいるのかどうかしらないが、エリアーデに語らせれば、世界はまさにイ...







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