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評者◆秋竜山
オイラは悪魔、の巻
No.2917 ・ 2009年05月09日




 連想ゲームで「ささやき」といったら「悪魔」だろう。「悪魔のささやき」である。そして、加賀乙彦『悪魔のささやき』(集英社新書、本体六八〇円)を読め!!と、ささやかれた。悪魔にだろうか。神は、ささやかないだろうか。本書を読むと、悪魔のささやき通になれるだろう。私はマンガでよく悪魔を登場させているが、怖さというより笑いのほうの悪魔だろう。
 〈昔からよく「魔がさす」という言い方をしますね。悪魔のささやきは、それと似ているんだけれど、イコールではない。(略)魔がさしたと言う場合は、その一瞬のことであって、わりとすぐにハッと我に返ります。影響を受けるのも、その人一人、個人です。逢魔が時の薄気味悪さはあまり長続きしません。しかし、悪魔のささやきの本当の恐ろしさは、影響が持続する点にある。一瞬で終わることもありますが、一ヶ月、一年、さらには十年以上にもわたって、人間をとんでもない方向へと走らせるエネルギーを持っているんです。しかも、一人ではなく大勢の人間にパッと同時に働きかけることができる。〉(本書より)
 ささやくというのだから、耳元でささやくのだろうか。小さな声で。その人だけにわかる声で。
 〈悪魔のささやきに動かされるときの人間の意識を見ていくと、ある共通点に気づかされます。それは、慎重によく考えたうえでの行動ではなく、ふわふわと風のように動いている心の状態であるということ。(略)あいまいでぼんやりとした精神状態において、悪魔がささやくという現象が起こりやすいのです。〉(本書より)
 さあ、大変だ。ふわふわと風のように動いている心の状態とか、あいまいでぼんやりとした精神状態において、だとか、悪魔はそのような人間をねらっているらしい。マンガに出てくる悪魔の姿形は一見して悪魔とわからなくてはいけないだろう。神の姿形とて同じだ。実際に悪魔を見てこのようでしたというものでもない。本書に掲載されている〈フランスの挿画画家ドレが描いたミルトンの「失楽園」のサタン。人類を攻撃する策を練っている。「サタンの悩み」(部分)〉の悪魔の姿形からマンガのほうもマネているのかもしれない。背中にはコウモリのような羽根をつけている。第二章に〈日本人はなぜ悪魔のささやきに弱いのか〉。日本人は、ふわふわとかぼんやりしている国民なのか。
 〈すべてを造ったとされている神は、悪魔もお作りになった。なぜなら、人間を試すために必要でしたから。人間が神に背くよう仕向けることによって信仰の強さを試す存在、それが悪魔なんだと思います〉(本書より)
 悪魔にささやきかけられたら耳をふさぐというわけにはいかないだろう。
 〈では、悪魔のささやきはどのように聞こえてくるものか(略)結論から言うと、はっきりと声が聞こえたというケースはまれです。(略)何か得体のしれない強い力に背中を押されたように感じ、それを「悪魔にささやかれた」と表現したのです。〉(本書より)
 悪魔は日本語でささやくのだろうか。そうでなければいくらささやかれてもチンプンカンだろう。通訳がついていたりして。それともたどたどしい日本語であったりして……。







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