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評者◆秋竜山
プロの哲学、の巻
No.2916 ・ 2009年05月02日




 B‐ing編集部編『プロ論。才能開花編』(徳間文庫、本体648円)では、第一線で活躍しているプロ、総勢54人の「自分を生かす仕事術」。みんな、名前が通っている人たちだ(だからプロかしら)。名前が通るということは大変なことであって、まず世間に名前を知ってもらわなければ話にならないだろう。名前の知られているプロと名前の知られていないプロ。何をプロとするかだが、よく「名前は後からついてくるものだ」なんていいかたをするが、名前が後からついてくるような、のんびりした時代ではないだろう。まずは名前だ。名前をどうやって売り出すか。名前さえ世に出てしまったら、しめたものである。それこそ99パーセントプロであるはずだ。仕事ぶりではなく、名前ぶりである。なんて思ってしまうが、間違っているだろうか。本書では有名人のプロばかりであるから、やっぱり有名人の話って面白い。コラムニスト、勝谷誠彦氏の話(本書での)が面白い、というかドキッとするものがあった。〈これまでの人生で最も怖かったことは何かと聞かれれば、戦争中のイラクで死にかかったことではなく、会社を辞めたことだったと思います。〉この、ひとことは会社を辞めて一本立ちする恐怖をズバリいいあてているようだ。〈辞めるのは怖さがある。〉この怖さって、食べていけるかどうかということだと思うんだけど。やっぱり、そーだよね。〈会社を辞めたときの恐怖は、今も続いていますよ。収入がなくなるのではという、断崖の下をのぞくような恐怖です。街を歩いていると、路上生活者に目が行くこともあった。でも、この恐怖は付き合っていかないといけない恐怖なんですよ。〉プロもやっぱり人間ですよね。青島幸男氏(作家)のプロ論も面白い。
 〈どんな仕事でも、やっぱり好きになんなきゃダメだと思うね。人一倍時間をかけたり、労力を惜しんだりしたことは結果に表れる。だから、面白がれることが大事。面白がってやってるヤツと、苦労してやってるヤツと、どっちが勝つかな。やっぱりさ、面白がってやってるヤツにはかなわないんだよ。もちろん苦しいこととか、屈辱に思えることだってある。でも、そういうのもさ、いずれは自分の糧になると思ったらラクなんだよ。(略)若いときに嫌な思い、面白い思いをいっぱいしたヤツは、そうじゃないヤツよりもずっと面白い人生が送れるもの。(略)なんとかなっちゃうもんなんだって、人生なんてものはさ。〉(本書より)
 棋士の谷川浩司氏の話しもズシンとくるものがある。〈いいときは焦らない、悪いときはあきらめない。最後は自分が勝つようにできていると思って、臨めばよい。〉〈よく、次の手を読む、なんて言いますが、実は読むよりも読まないほうが大事なんです。100の手があるとすれば、97は読まない。本筋に近い、幹に近い3つの手を読む。太い幹を見極める大局的な感覚がとても重要なんです。〉谷川氏のプロの哲学として〈迷ったときには原点に戻ること。それがいい人生につながる。〉という。「原点に戻らねばならない」と、たえずいっていた人がいたが、タイムマシンで過去へいったほうが早道かもしれない。以外と、ガッカリさせられたりして。







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