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評者◆内堀弘
実は初めて読んでみた――どんどん大きくなる新刊書店には、いったい何が詰まっているのか
No.2916 ・ 2009年05月02日




 某月某日。土曜の古書展でぼんやりと棚をながめていたら藤沢桓夫の『大阪』(昭12)を見つけた。函は欠けているが300頁ほどの小説が八百円というのがありがたい。
 東京古書会館では毎週金、土曜日に古書展が開かれていて、初日の金曜は相変わらずの賑わいだが、二日目の(しかも午前中は)のんびりしたものだ。
 私も古本屋なので、耳学問で藤沢桓夫は知っていた。何冊かその著作を売ったこともあるが、実は読んだことがない。一ヶ月ほど前の古書展で買った文庫本の『大坂自叙伝』(昭56・ちなみに二百円)が滅法面白かった。もう少し読みたいと思ったが、新刊ではもうこの人の本は出ていないようで、その文庫本さえ品切れとなっていた。
 これもちょっと前のことだ。必要があって大型書店で野口冨士男の随筆を探した。ところが、文庫の『わが荷風』と『私のなかの東京』しか置いてない。帰って調べてみると、他はもう品切になっていた。徳田秋声が新刊で読めないならまだしも、野口冨士男がほとんど読めないのは驚きだった。古本屋では現役の人気を保っている作家だからだ。たとえばインターネット「日本の古本屋」で検索すると、野口冨士男で500件以上がヒットする。もちろん、同じ本の重複は多いのだが、そのおかげで(と古本屋が言うのも妙だが)価格は安目に安定している。
 藤沢桓夫を「日本の古本屋」で検索すると、これも290件がヒットする。別に新刊の世界から消えていても、面白いものはここで充分に供給されている。何の問題もないと言えばそれまでだが、では、どんどん大きくなる新刊書店には、いったい何が詰まっているのか。
 去年の十月、金沢の小出版社・亀鳴屋から『上司小剣コラム集』(荒井真理亜編)が出た。明治~大正に新聞連載したコラムを集成したもので、480頁の厚さだが読んでいて飽きることがない。実は、上司小剣も古書では売ったことはあるが、読んだのは初めてだった。なるほど、面白いからすぐ売れたのか。上司小剣の本が新刊書で出るのは昭和27年に『鱧の皮』(岩波文庫)が刊行されて以来だそうだ。







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