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評者◆田原牧
マーティン・ギルバート著『イスラエル全史(上・下)』を読む 現実に流血を食い止めるための議論を―どんなに相手が嫌いでも物理的に限られた空間で、同じ時間に生きていこうとする限り共存するしかない
イスラエル全史(上・下)
マーティン・ギルバート著、千本健一郎訳
No.2912 ・ 2009年04月04日




 上下二巻、計千頁超の大著である。原著は英国の歴史家で、チャーチルの公式伝記(伝記にも公式、非公式があるらしい)を記したというマーティン・ギルバートによる「Israel,A History」(1998)。これに二〇〇七年までの歴史を加筆して訳出された。
 アカデミックな歴史書というより物語である。全体を覆うのは過剰なほどのシオニストたちの苦悩と英雄談だ。対照的にパレスチナ人についての記述はパレスチナ解放機構(PLO)の戦士は「テロリスト」であり、イスラエル側の侵略行為も「アラブ人村の住民が追放され、その後、村に返ることは許さなかった」とあっさりしたものだ。つまりは思い切りイスラエル側に肩入れした物語である。
 そのイスラエルの中でも、この物語はシオニストたちの視点に貫かれている。たしかにその指導者たちの言葉や表情をこれだけ集めたという点では労作といえよう。だが、あくまで「シオニストの物語」である。
 物語はシオニズム運動の草創期から始まっているが、この人造的な国家建設運動はその当時、ユダヤ人のユダヤ人たるゆえんであるユダヤ教の宗教界では異端であった。ユダヤ人のガルート(追放、捕囚)は選民ゆえに科せられた試練であり、待つべき救世主の到来によるゲウラー(救済)を人為的に速めてはならない――それが当...







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