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評者◆秋竜山
時間を感じよ、の巻
No.2911 ・ 2009年03月28日




 時間を感じるということ。腕時計をしているのにもかかわらず、時間を短く感じてしまうのである。「年をとると、まったく、時間が短く感じてしまうものだ」とは、腕時計とは関係ない。「年齢を感じること」は「時間を短く感じること」ということになるだろう。文句のいいようがあるまい。一川誠『大人の時間はなぜ短いのか』(集英社新書、本体七〇〇円)では、タイトルが、そのものずばり、の大人の時間の短く感ずるかについてである。
 〈フランスの哲学者ポール・ジャネーとその甥の心理学者ピエール・ジャネーは、感じられる時間の長さは、年齢と反比例的な関係にあるという仮説を立てた(Janet,1928)。一般に「ジャネーの法則」として知られている。同じ1年であっても、10歳の子供にとっては人生の10分の1であり、60歳の大人にとっては60分の1である。年齢に対する比が小さいほど時間が短く感じられるので、加齢によって時間が短く感じられることになるというのが、彼らの考えの要旨であった。〉(本書より)
 そういえば、子供の頃は「待つ」ということが多かった。待つということは、「早くこい」ということだ。一番よい例としては「早くこい、こい、お正月……」という歌の文句だった。待ちこがれて長い日を味わって、やっと、うれしいお正月がやってきたものである。お正月の一カ月前には子供雑誌の新年号の発売する日。待って待って待ちきれなくて、発売日は明日であるとわかっていても一里もある隣り村にある小さな本屋まで山道を駆けていって、やっぱり新年号が並べられていなくて、ガッカリして帰ったものであった。なんという時間のたつのはノロノロなんだと思わざるをえなかった。「おもしろブック」「少年」「少年画報」など、まだまだ子供漫画雑誌はいっぱいあって、全国の子供たちを待たせる罪なものであった。夏休みの一カ月間も長かったように思える。なのに、年をとるにしたがって、時間が短くなってしまうのは、子供時代のように待つということをしなくなってしまうからかしら。脳の働きは常に過去をふりかえさせる。たとえば、テレビ番組である。月曜日の連続番組も、「エッ!! 二、三日前に観たと思ったら、もう今日……」と、一週間の早さにいつも驚き、「まったく、時間のたつのは早いものだ」と、同じセリフを繰り返している。
 〈物理学においては通常、過去、現在、未来と進行するような時間は想定されていない。哲学においても、時間の進行や、現在という特権的な時点は、しばしば実在性を否定されている。しかし、私たちには、時間が過去から現在を経て未来に向かって進むように感じられる。それは、人間の体験の本質的な特徴である。〉(本書より)
 年をとっても子供のような「感じ方」を持てば、時間を長く感じることができるのだろうか。つまり、過去のことは忘れてしまって、先のことばかり追いかけるということだ。
 〈感じられる時間の長さに影響を及ぼすのは、年齢や、その時に感じている楽しさ、退屈さだけではない。実は同じ長さの時間でも、その時間をどう過ごすかによって、感じられる時間の長さは変わってしまうのだ。〉(本書より)
 時間とは感じるもののようだ。







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