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評者◆なし
お年寄りと話そう
お年寄りと話そう
日野純子
No.2911 ・ 2009年03月28日
年齢で差別したと評判の悪かった「後期高齢者」制度は、呼称を変えただけで残されているようだが、人間は年を取るとどう変わるのだろうか。この本は高齢者とのコミュニケーションの取り方を、ことばの発音、スピードといったごく初歩的なことから説き起こしている。
対話の困難についてまず考えられることは、高齢者の耳が遠くなること。難聴は単に音が聞こえにくくなることではない。聞き分けにくい、という要素もある。補聴器は音を大きくする作用をするから、この聴き分けが調整しにくい。 次は、時代変化のスピードについていけなくなる。個人差が大きいので一概にはいえないが、インターネットやケータイとは無縁という人もいる。外来語、カタカナ語も受け入れにくい。その人が覚えている時代のことばで応対しなくてはならない、といえる。 著者は外国人に日本語を教える人である。その経験からか、まずはっきり聞こえるような発音のしかたから説いている。そして、ことばを選び、言いかえる。質問のしかた、説明のしかた、そして話の聞きかたへと進む。 こうすればうまく話が通じる、というほど事は簡単ではなさそうである。著者のイメージにあるお年寄りとは、たとえば施設で暮らしている人とか、介護を必要としている人のように感じる。こうした人たちは障害をもっていたり、何らかの機能低下で不自由をしている人ではないだろうか。助けを求めている人は、そのぶん自信を失っていたり、不満をもっていることが多い。そうでなければ、多少動作がおそくなっても思考力は保っているだろう。また、高齢者がふえているのはそれだけ長命者が多くなったということで、たとえば二十年前の八十歳と今の八十歳では、理解力ははるかに向上していると思う。 この本の説明はひとまず初歩的段階で終わっているが、単に話を聞きだす、ということから一歩進めて、お年寄りたちが進んで話し、またそれを喜んで聞く、という社会をめざしたい。 |
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