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評者◆秋竜山
「敵」は、まさかのあいつ、の巻
No.2909 ・ 2009年03月14日




 女ではなく、男だ。川北義則『男には七人の敵がいる』(PHP新書、本体七〇〇円)。男を強調して、よく言われたものだった。「男は閾を跨げば七人の敵がある」と。聞かされた時は少年だった。だから、生まれ育った田舎の家。聞かされるたンびに、田舎で生活しているその家の閾が頭の中に浮びあがった。「そーか、あの閾を跨げば七人もの敵がいるのか……」。閾にのぼって叱られた。閾は跨ぐものだ。
 〈昔から、「男は閾を跨げば七人の敵がある」と言われてきた。七人の敵がどんなものを指すのかは必ずしも明らかではないが、数のうえで区切りのいい数字をつけたのだろう。男は外へ出ればたくさんの敵がいる、というくらいに受けとめればいい。〉(本書より)
 男は閾を跨いで外へ出れば七人の敵がある、のだったらわかる。ところが本書で面白いのは、閾を跨いで外へ出ての敵と、今度は閾を跨いで内へ入っての敵がいるという点だ。「家の中にいる敵とは……」。まさか、あいつか。
 〈本書では、あえて七人の敵を「上司、部下、同僚、妻、女、子、親」にしぼってみた。さらにつけ加えると、「自分のなかにいる敵」にも言及した。周囲は敵だらけと心するのも寂しいが、このきびしい世の中、そのくらいの覚悟でいたほうがいい。〉(本書より)
 血縁である親と子が敵とは、そして妻までもを敵にまわさなくてはならないのか。味方と思っていたのが敵だったなんて、それがきびしい世の中ではすまされない。そして「自分のなかに敵がいる」となれば、やはり、その敵とたたかわなければならないのか。自分のなかの味方とはなにか。ややこしくなってきたぞ。混乱してくる。
 〈同じ自己暗示でも、悪い自己暗示というのがある。「自分はダメな存在だ」と思うことほど悪いことはない。あなたが自分自身を軽んじるとき、あなたは自分自身に向かって、「自分はダメな人間だ」と言い聞かせているのだ。それは、自分の心に、「もっとダメなやつになって、失敗を重ねろ」と命じているに等しい。頭のなかをマイナスの想像でいっぱいにしている。そんな状態でよい仕事ができるはずがない。(略)悪い自己暗示に取りつかれている人は負けつづける。〉(本書より)
 自分の中にいる敵に、「もうダメだ」なんて弱気になってはいけない。絶対に負けないという二つの切り札があるという。
 〈一つは、「おもしろがる」ことだ。(略)二つ目の切り札は、「あきらめない」ことだ。(略)「まだまだ」と思えば、何事もまだがんばる。闘っていて、敵がいちばんいやがるのは「あきらめない」タイプということを知っておこう。〉(本書より)
 ひとことで「おもしろがる」というけれど、「おもしろくない」ことを「おもしろがる」ことに、きりかえることは極めてむずかしい。おもしろくないので、ひとねいりすれば、気分もスッキリ、おもしろがることがうまれるというものでもない。それでも「あきらめない」ことだ。今、世の中は、「おもしろくない時代」ともいえるだろう。あきらめないで、おもしろがろうとすればするほど、シラケてしまう。一億総自己暗示にかけるということか。「自分は今、おもしろいんだ。おもしろいんだ……」。なにが、おもしろいかって、こーいう自分がおもしろい。







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