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評者◆秋竜山
あなた、成功してますか?、の巻
No.2907 ・ 2009年02月28日




 書店で、思わず手にする本って、その本のタイトルに手をのばすのではないか。手にしたくなるようなタイトル。新田義治『成功本はムチャを言う!?』(青春出版社、本体七〇〇円)など、その部類にはいるだろう。一冊の本を書きあげるには、参考文献を六十冊は読むべきだ、なんて昔誰かにいわれたことが頭のどこかにこびりついている。だから、本の最後のページにのっている参考文献に興味がある。「なるほど、こーいう本を読んで、こーいう本がうまれたのか」というたのしさがある。一度、その本の参考文献を全部読んでみようなんて思ったことがあるが、思っただけで実践に移すことはなかった。本書も、〈おもな参考文献〉として、三十二冊の参考文献が並んでいる。どの一冊も手にしたくなるようなタイトルである。どれも成功法則によって成功するだろうというような本だ(読んでいないが、そのように思わせてくれるタイトルである)。この本をズラリと本棚におさめて、毎日眺めていたらそれだけで成功しそうな気がしてくるだろう。で、「アレ!?」と、思ったのは、この参考文献によって、この本がうまれたのか。と、いうことだ。〈成功本はムチャを言う!?〉と、いう本である。成功本がどのようなムチャを言っているのか本書を読めばわかるだろう。
 〈「成功者たちは、わかってないなぁ」と思ってしまいます。成功本の著者たちは尊敬に値する凄い人たちではあるけれど、うまくできない人たちの心理に関しては、うとい人が少なくないのです。成功本の典型的な提言には、「とにかく実践せよ」のほかにも、「確固たる目標を持て」「まず具体的な目標を立てよ」というのも、よく見られます。目標も必要です。目標がなければ人はモチベーションを維持できません。(略)成功本の著者と、それを読む多くの読者の間に深くて大きい溝、心理的なギャップがあるのです。成功本の著者はみんなすばらしい提言やノウハウを開陳してくれています。たしかにそれを実践に移せたら、そして、それを続けられたら、もっと多くの人が成功できるに違いありません。〉(本書より)
 成功本って、「世の中には、そんなうまい話しはないよ!!」の類のものなんだろうか。でも、成功本を読むと、気持よくなるというか、不思議な満足感というか、いや満足はしないが、医者からコレステロールが高いから、この食事をとるようにと渡されたパンフレットのようなもので、実践はしないが眺めているだけで効いてくるような気がするといった、そんな気分にさせられるものである。自分は成功などするわけがない。成功本を読むのは成功という薬をのんでいるようなもので、はじめっから効く薬とは思っていない。でも、のむことによって安心感のようなものがうまれる。そんな気分にさせられるものである。
 〈この世では成功しなければならないのだと言われる。だが私はこう思う、まず生きなければならないのだと。これこそ世の最大の成功なのである。――ジャン・シオノ「真の富」〉(本書より)
 まったく、そのとーりだなァ!! と思う。今の大不況。成功感も変わってくるだろう。







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