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評者◆村木哲
「カリブ」島嶼群を舞台に描かれる『嵐が丘』に想を得た物語――クレオール的世界に回帰、開示した作者の熱き言葉
風の巻く丘
マリーズ・コンデ 著 風呂本惇子・元木淳子・西井のぶ子 共訳
No.2906 ・ 2009年02月21日




 作者のマリーズ・コンデ(1937~)は、カリブ海の島嶼群・グアドループ(フランスの海外県)生まれで、「裕福な黒人家庭に育った」という。両親からクレオール語を禁止されフランス語のみで話すことを強いられて育ったコンデは、作家活動とともに、クレオール的世界へ回帰、開示していく。わたしは、この作家の作品に初めて接することになったのだが、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』に想を得て書かれたという本作品は、「カリブ」島嶼群をリアルなクレオール的場所として描出し、当然のことながら、作者自身の源初への遡及を孕んで熱く物語の言葉を紡いでいることが伝わってきて、鮮烈な読後感を抱いた。
 つまり、それは、イギリスのヨークシャーを舞台とする『嵐が丘』から喚起されたとはいえ、この作者は、舞台を「カリブ」島嶼群に置き換えたことによってまったく別の物語を現出させたといっていい。
 「カリブ」に内在する虐げられた歴史は錯綜した様態を湛えながら続いてきた。黒人、ムラート、白人といった幾層にも分岐せしめられた階層差別といったことも含め、この作品の時制(十九世紀後半から二十世紀前半)がもたらすものは、極めて歴史の深い暗渠を掘り起こしているというべきかもしれない。
 肌は黒く、「髪は、黒人とインド人の混血のような巻き...







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