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評者◆ベイベー関根
マンガ家稼業は売れても地獄、売れなくても地獄?――関谷ひさし『侍っ子』(本体一八〇〇円、双葉社)、小林まこと『青春少年マガジン 1978~1983』(本体九三三円、講談社マガジンKCDX)、辰巳ヨシヒロ『劇画漂流』(上下巻、本体各一六〇〇円、青林工藝舎)
No.2905 ・ 2009年02月14日




 う~む、知らなかったなあ、関谷ひさしが亡くなってたなんて……。というか、まだ生きてたんだという感じではあったけど、まあ、それはともかく、亡くなってから刊行された描き下ろしがコレ、『侍っ子』ざんす。抜群の剣の冴えを見せるが人は切れない少年剣士と、血を見ると力が抜けてしまうチャッカリものの浪人、それに一家皆殺しにされた仇を討とうとする美女が活躍する少年向けエンタテインメント時代劇……なんてこった、面白いじゃないか!
 この作品、ならびに関谷ひさしの魅力については、巻末のいしかわじゅん・畠中純・夢枕獏が語っているのでそれを参照していただくこととして、問題はこれが著者の生前には出版されなかったってことだよなあ。なんで? たぶん編集者が、たしかに面白いけど、これは今のマンガ市場では出しようがないと判断したからなんだろう。今の子供はこんなの読まないよ、みんな『コナン』とか『NARUTO』とか読みつけてるんだから、と。まあそうなんだろう。しかし、面白いもの、優れたものを出せなくて、何の出版社だ、何の多様化だ市場の成熟だという話は残る。もし自分がマンガ出版社の社員で、関谷ひさし本人からこの作品を持ち込まれたらどうするだろう、という問いもまた残る……。
 さて、そうした流行り廃りの激しいマンガ業界の歴史の一部を白日のもとに晒してみせたのが、小林まこと『青春少年マガジン1978~1983』だ。いや~、これもスゴい。漫画家デビューの経緯に始まり、小野新二、大和田夏希との「新人3バカトリオ」と呼ばれる交友、過酷な労働環境、そしてこれは書いても差し支えないと思うから書くけど、大和田と小野の死、そしてそれを尻目に売れ続ける『少年マガジン』……という半自伝的作品だけれども、はっきりいっていかにマンガ業界が作家を使い捨て扱いしているかをバクロしたものだ。こうした事態を踏まえて、今は週刊マンガ雑誌でも必ずしも毎週載んなくてもいいようになってきたんだと思うけどさ。もちろん小林のことだから、別に恨み節だとか辛気くさい問題提起とかにはならず、一級のエンタテインメントに仕上げているのはさすが。でも、帯に「ボロボロ泣きながら描きました」とあるのは本当だろうな……。
 マンガ業界の裏側を描いた半自伝的作品ということだと、辰巳ヨシヒロ『劇画漂流』が見逃せないな。『青春少年マガジン』から20~30年ほど遡り、終戦から劇画勃興への流れを辿る本作は、資料的な価値のみならず、エンタテインメントとしても一級品だ。出てくる人々が、もうみんな人間くさい人ばっかりでね、嬉しくなっちゃうよ。残念なのはけっこういいとこで終わっちゃうことで、この続きは『アックス』が責任もって載せるべきだと思うぞ。ともかく、今や海外での方が評価が高いともいう辰巳ヨシヒロ、以前に出たアンソロジー『大発見』『大発掘』ともども万人に一読を勧めたいものだ!







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