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評者◆秋竜山
オイ!! まだか、の巻
No.2903 ・ 2009年01月31日




 これは力関係というべきものなんだろうか。〈心をつかむ〉と〈心をつかまれる〉。〈つかむ〉ほうが勝ちで、〈つかまれる〉が負けか。負けるが勝ちともいう。心をつかむとか、つかまれるとか、それが人間関係というものか。心理学とは相手との戦いか。渋谷昌三『〈なぜか人に好かれる!〉心をつかむ心理学・相手の〝次の反応〟がわかります』(三笠書房、本体四九五円)では、役に立つ心理学とでもいうのか。はたして、読者の心をつかむことができるだろうか。心理学は心理術でもあるわけだ。〈相手を気持ちよくさせる心理学〉という項目。〈待たせる心理と待たされる心理〉という、待たせたり、待たされたり、よくやるものだ。どちらも〈心理上〉での出来事である。時には困ったものだ……と、思えるものである。
 〈三二秒。これは日本人が店頭で待たされたとき、イライラしはじめる限界の時間だそうだ。特に、おなかをすかしたお客が飛びこむファーストフード店では、「すぐ食べたい」というお客を獲得するため、待ち時間を一秒でも短くする知恵をしぼっているらしい。〉(本書より)
 それ以上、待たせたらお客は怒りだすのだろうか。と、怒って出ていってしまう。お客を逃がしてしまうことになる。お客は怒りながら店を出る。出てみて、どこにも店がないことを知る。しかたなしに、またその店に引きかえす。
 〈あるラーメンのチェーン店の経験では、お客を待たせる限界は六分だそうだ。〉(本書より)
 六分待ったら、「オイ!! まだか」と声をあげる。ラーメンごときに、こんなに待たされてたまるものか。ウナギなどの高級品になると、昔から待たされるようにだまされているから、そのだまされることが〝通〟であったりとか、わけのわからないことで、怒ったりしない。怒ったら笑われたりする。「野暮」ということになる。心理というものはそんなもんだろう。そういえば、私は、昔、昔のその昔、電話がダイヤル式ではなく手動式といって、電話機についているハンドルをグルグルまわすと、「ハイ!!」と郵便局の電話交換手が応答した。電話交換手といえば女性と決っていた。ところが、私はある事情で立派な男性そのものであるのにもかかわらず、電話交換手をやったことがあった。研修所で訓練を受けた。その時、教官にいわれたことは、将来、日本の電話交換手はすべて男性になる!! ということであった。うそつき。でも、たのしい想い出であった。そういう想い出に浸っているということではなく、電話機のハンドルをグルグルまわしても、いっこうに郵便局の電話交換手の「ハイ!!」という応答がない。一秒……二秒……三秒……。出ない。六秒たっても出ない。イライラしだす。七秒、イライラが怒りにかわる。八秒、怒り出す。「なにやってんだ!!」そういうものだという訓練を受けた。待たせるにも理由があるが、お客は待たせられてそんな理由など聞く耳をもたないというのが心理である。そんな時、私が「ハイ!!」なんて男の声で応答したりすると、お客の怒りは「ふざけている」という風にとらえられることになる。「男の心理」として、いや相手はお客さまだ。ただ、ひたすらあやまるしかなかった。そんな時代が古き日本にはあった。







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