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評者◆米田綱路
中世についての知識とイメージを豊富にする――充実した人名紹介など、利便性の高い百科事典
図解 ヨーロッパ中世文化誌百科(上)(下)
ロバート・バートレット 著 樺山紘一 監訳
No.2901 ・ 2009年01月17日
二〇世紀の現代絵画を見るときと同じ態度で、ヨーロッパ中世の無名の画家たちに向き合ってみよう。それが本書の姿勢を端的に表している。これまでの中世のイメージや世界観を打ち砕き、古い中世観を脱構築する。そのとき、ヨーロッパ中世はまったく斬新な顔を見せることになる。
古い中世観を打ち砕くことが可能となったのは、新しい史料が発見され、研究が進展して、中世イメージを塗り替えてきたからである。 中世という歴史上の時代区分は、もちろん学者が便宜的に作ったものである。諸説あって、始まりと終わりが何時かということについては、流動的だった。 中世ということばには、新時代から見て「中間的」な時代であるというニュアンスがある。それはいうまでもなく、「中間的」な時代を脱し、新たな時代に入ったと感じた後の世代によって創り出されたものだった。 ただ、決定的なのは、ヨーロッパ史において中世とそれ以前の時代とをはっきり区切るのが、強固に統一された教会の存在であった。本書は、中世をつくった三つの要素を挙げている。一番目は、ローマ帝国の古典文明であり、二番目はキリスト教である。そして三番目は、東方からのゲルマン民族の侵入だった。 中世ということばが定着した理由は、ルネサンスの人文主義者たちが、一四世紀か... 【現在、図書新聞を定期購読されている方】 から「ご契約者のお名前」「郵便番号、ご住所」「メールアドレス」「ID・パスワード新規取得」の旨をご連絡ください。 【定期購読されていない方】 定期購読契約が必要です。 こちらから をしてください。 |
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