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評者◆ベイベー関根
藝の道、模倣の道……あるいはアグリー&ラグジュアリー――山田参助『ラムネイッキ』(本体一九〇五円、古川書房)、小日向『アグリっ娘』第一巻(本体六五七円、発行・テラ出版、発売・技術と人間)
ラムネイッキ
山田参助
アグリっ娘
小日向
No.2900 ・ 2009年01月01日




 わははははは、腹痛え!いやー、本読んでこんなに爆笑したのって何年ぶりだろか。そんなわけで、今回は山田参助『ラムネイッキ』を強くオススメしたい!
 とはいっても、普通の本屋さんでは売ってないんで、版元に直接注文とかしてもらわなきゃいけないし、何よりこれ、『さぶ』とか『サムソン』とか『激男』に掲載されてたゲイ漫画なんだけど……。
 山田参助といえば、田中小実昌『新編かぶりつき人生』カバーの秀逸なイラストでもおわかりのとおり、プリンプリンのストリッパーの嬢からミステリアスな美少年まで、何でも描ける才人だが、本人のメインの関心はそこではない。この本に出てくるのは、ヒゲ面小太りのサラリーマンとか、にきび面小太りの中学生とか、明治時代の丸眼鏡に小太りの法科の学生とか、とにかくそういうむくつけき&フカフカした日本男児たちがくんずほぐれつする世界なのだ!
 もちろんそれだけならば、ゲイ漫画の定食的存在ともいえよう、伏見憲明も太ってからモテるようになったというからな。この本が面白いのは、それがまたバンカラ文化華やかなりし明治時代や巨大ロボットの登場するSF世界や仁義の方が人命より重い東映ヤクザ映画の世界に直接つながってしまうところだ。それだけじゃないな、たぶん裸になったときの男の身も蓋もなさみたいなものがどうにもおかしいんだろうなあ。もひとつ、被写体としての男の肉体の不自由さを解放した、とでもいっておくか。脳裡に灼きつくフレーズにも事欠かず、「海軍精神なめんじゃねぇ!」とか「父:たのむ〓 ヒロシ〓 その手を抜いてくれ〓 後生だ〓 息子:いやだ! 絶対にはなすもんか! そんな弱虫な父さんなんてこうだ〓」といった名台詞から、「任侠残酷物語 恥のうわぬり」とか「ふるちん酒 主任と俺」といった名タイトルまで、まさに感動と爆笑のつるべ打ちだ!
 もう一冊、刊行はちょっと前だけど……あ痛テテテテ! いやー、本読んでこんなに痛み感じたのいつぶりだろう。というわけで、返り討ち覚悟で、小日向『アグリっ娘』を推ス!
 いまやイケメンぞろいのゲイ業界だが、そんな中に誰にも相手にされないブスは存在する! 他人からはていよく利用されるだけで、友情も愛情も信用できない永遠の弱者たち。そんな彼女たちは何を支えに生きていけばいいのか〓 それは虚勢と現実逃避だ! というあまりにも情け容赦ない(というか、笑うよりない)描写が、読者の顔面をヒットし、みぞおちをえぐる。この『臨死! 江古田ちゃん』を軽く凌駕する痛覚は、やっぱりどこかに優しさを残してしまう(むしろ、そういう甘さこそが攻撃対象なのだ)女では表現しえないものかもしれない……。
 小日向にはイマ風のゲイの恋愛模様を描いた新刊『Relation』もあるが、衝撃度はどう考えてもこちらの方が上、それだけじゃなく、信頼すべき筋によれば、初期作品にはそれこそ明治時代を舞台にしたような作品があるとも聞く。うおお、読んでみてえええ~!







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