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評者◆秋竜山
横山隆一さん万歳!、の巻
No.2899 ・ 2008年12月27日




 テレビで観る石原慎太郎の顔は、おこってばかりいて怖いねえ。やっぱり都知事になると、あのような顔になってしまうのか、そうしていなければならないのか、マジメにやればやるほど、おこった顔にならざるをえないのか。よくわからないけど。石原慎太郎『私の好きな日本人』(幻冬舎、本体一六〇〇円)では〈私が彼等を好きでたまらないということで、私は私自身を捉えなおし、この人の世を生き抜いていく自信を得ることも出来るのだ。かくも多くの素晴らしい、日本人として至福なことだと思う。そしてそれこそが、歴史と人間の関わりの本質に違いない。〉(本書より――人生の原典)
 本書に登場する人物は〈日本武尊、織田信長、大久保利通、広瀬武夫、岡本太郎、賀屋興宣、横山隆一、五島昇、小林秀雄、奥野肇〉といった歴史上の人物だ。横山隆一の名前がある。漫画集団をつくった漫画の神さまのような人である。漫画集団の集まりはいつも横山邸であった。いつも悦楽のような時間を過した。漫画家たちの漫画の話はいくら時間があっても足りないくらいだった。いつも「エッ、もうそんな時間」といった。本書を読んで感じたことは、ジーンとくる石原慎太郎さんの心のやさしさにふれたことであった。横山さんをこのような素晴しい文章で表現していただいたことを漫画家の後輩として感謝せずにはいられない気持になった。「ウン、そーだよなァ!! 石原さんのいわれるように横山さんという人はこの文章のような人だった」。この文章を横山さんに読んでいただいたらよかったのにと残念な気もしてくる。よろこんだろうなァ!!と思う。テレビでみる慎太郎さんの都知事の顔もおこってばかりいないで、このような文章の顔にすればいいのにねぇ。
 〈横山さんの晩年に、私としては忘れがたい、思い出す度に胸が熱く、というより暖かくなる思い出がある。議員を辞めた後、逗子の家に戻ってよく出かけていっていたマリーナのスポーツクラブで時折出会う漫画家の小山賢太郎さんが、私が逗子に戻ってきていると横山さんに告げたら、また遊びに寄るようにとの言伝てがあった。議員時代東京に居を移してすっかりご無沙汰していた後ろめたさで、出向くのを遠慮していたのだが、その伝言にすがる思いで、勘当のとけた息子みたいな気分で電話したら、聞き覚えのある奥さんの声が出て、すぐに喜んで取り次いでくれた。〉〈早速その週末飛んでいった〉(本書より)
 そのことを横山さんからよく聞いた。たしか、もっと以前に横山さんが「慎ちゃん」といって石原慎太郎さんのことを話してくれた時のことだった。私はビックリして、「エッ!! あの慎太郎刈りの慎ちゃんですか」。私が大きな声でいったので横山さんは笑っていた。私も、ずいぶん古いことをいってしまったものだ、と一緒に笑ってしまったのだった。石原慎太郎といえば私のような世代は、慎太郎刈りをマネして得意がったことがすぐ頭に浮んでしまうものだ。女の子にモテたいばっかりに。あのいかす頭の刈りかたは、今でも古いなんて思っていない。むしろ一番新しいのではないだろうか。ホントにそー思う。







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