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評者◆添田馨
詩の未来に向け船出した「びーぐる」――雑誌「季刊 びーぐる」(澪標)
季刊 びーぐる
No.2898 ・ 2008年12月20日




 詩の雑誌「季刊 びーぐる」が、この10月に船出した。ダーウィンの「ビーグル号」にちなんだ命名だという。編集同人は高階杞一、細見和之、山田兼士、四元康祐の四人。「詩学」の廃刊、「ミッドナイト・プレス」の休刊と、このところ続いた商業詩誌の漸減という厳しい環境のなかで、本誌の創刊はひときわ目を引く。
 創刊特集は「詩の現在そして未来」。何人もの書き手が同じテーマでエッセイを寄せていることも、創刊号ならではの壮観な眺めではある。詩の雑誌が商業的に成り立つかという問いは、詩に関わる誰にとっても依然として憂鬱な問いに違いない。創刊記念座談会のなかで、ドイツ在住の四元氏を除いた編集人三人がそれぞれに抱負を語っているが、私に救いと映ったのは、彼らが自発的に雑誌の立ち上げに関わり、また今後はボランティアで編集に参画しながら、あくまでも商業誌を目指していくという気概を確認できたことだった。発行所は大阪の澪標が受け持つ。
 詩は、ある意味で誰にでも書くことができる。同人誌も、まあ同じだ。だが商業詩誌となると、よほどの志がなければ実現できない。それを裏で支える編集同人の苦労は、従って並大抵ではないだろうが、その志の高さに私などは撃たれたのだった。
 現代詩以外に本誌は短歌と俳句の時評も併載するなど、詩文学のクロスオーバー的志向性を顕著にしているが、特に私に新鮮だったのは四元氏などによる欧州での文学フェスティバルの報告内容だった。これまで、そうした情報に触れる機会がほとんどなかったため、これは世界に向けて開かれた貴重な窓だと思う。今回はジョージ・スツィルテスという未知の詩人の講演の言葉が紹介されている。「もちろんですとも。詩の未来は保証されています。」―亡命ハンガリー人としての出自を持つというこの英国詩人の何気ない一言が、私にはとても印象に残った。







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