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評者◆秋竜山
X歳の教科書、の巻
No.2897 ・ 2008年12月13日




 七人の特別講義プロジェクト&モーニング編集部編『16歳の教科書――なぜ学び、なにを学ぶのか』(講談社、本体七八〇円)を読む。誰もが、自分にとっての16歳を持っているだろう。あの頃、あの時代、あの16歳の頃。もう一度、やりたい年齢は16歳だ。だからといって、同じ16歳はイヤだ。別の16歳をやってみたい。確実に別の16歳があった。別の16歳が向うからやってくる。私の16歳がこっちから。私の16歳は向うからやってくる16歳に気づく。向うは気づかない。私は、とっさに身をかくす。そして向うの16歳が通り過ぎるのを持つ。そんな16歳であった。だから16歳をやれるとすれば、向う側からやってくる16歳がいい。本書の〈16歳の教科書〉というタイトルが実にいい。「アア、もう一度」という意味をこめて、いくつになっていても手に取ってみたいものだ。本書の巻末資料として〈社会における「16歳」のポジション〉というのがある。〈本書の最後に、16歳という年齢が法律によってどう定められているか見ておこう。まず、16歳になると働くことができる。芸能人など一部の例外を除いて、15歳までの間は働いてはならないのだが、16歳になると認められる。だから高校生はアルバイトができるのだ。ただし、深夜の労働(夜10時以降)は18歳まで認められない。〉つまり、15歳までが子供であり、次の年の16歳になると大人であるということだ。女の子は16歳で結婚が認められる。ところが、なぜか男の子は18歳になるまで結婚は認められないということだ。〈16歳になる年の4月1日から就職、労働することができる。〉であれば、りっぱな大人であり、大人あつかいされなければならないのだろう。でも成人として認められないのである。なぜ女子の婚姻が認められて男子の婚姻が認められないのかも、考えてみてもわからない。選挙権も20歳にならないとあたえられないのである。わからないままに16歳をすごすことになるのだ。16歳から18、20歳と実にあやふやな年齢で社会ですごさなければならないのである。〈自分が子どもなのか、大人なのか。社会は自分のことをどこまで「子ども」と見て、どれくらい「大人」と見ているのか。こうやって法律の側面から考えてみるのもいいだろう〉と、いうわけである。でもいいなァ!! 16歳は。〈なぜ学び、なにを学ぶのか〉とか〈教科書〉とか、一番ピッタリと似合う年齢だからだ。〈16歳のきみたちは、もう子どもではない。そして残念ながらまだ、大人ともいえない。子どもの季節が終わり、大人の人生が始まったいま、きみたちに本書を贈りたい。〉と、いうのがこの一冊というわけだ。〈大人が読んでも面白い!(超豪華布陣の特別講義)〉とオビにある。国語(金田一秀穂)、数学(鍵本聡)、数学(高濱正伸)、英語(大西泰斗)、理科(竹内薫)、社会(藤原和博)、心理(石井裕之)という先生たちである。16歳という年齢につられて読んでみたくなるのだ。もしこれが、〈20歳の教科書〉とか〈30歳の教科書〉とか、調子にのって、〈60歳の教科書〉とか〈75歳以上の教科書〉なんてのをつくったら、どう受けとめるべきだろうか。いや、もしかすると、大反響なんてことになるかもしれないぞ。







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