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評者◆ベイベー関根
女性が描くオトコの世界 わりと新人vsわりとベテラン――小玉ユキ『坂道のアポロン』第二巻(本体四二〇円、小学館flowersフラワーコミックスα)、やまだないと『ビアティチュード』第一巻(本体五五二円、講談社モーニングKC)
No.2895 ・ 2008年11月22日




 しまった、萩尾望都を読み返してメソメソしてる場合じゃなかった! 気長にかまえてたら『ダ・ヴィンチ』ふぜいに先を越されてしまうとは……くそう。
 というわけで、今回は小玉ユキ『坂道のアポロン』2巻だ! 実はこの人もいつか取り上げたいと思ってたんだけど、なかなかチャンスが合わなかったのさ。デビューは2000年なんだけど、単行本になりはじめたのはやっと去年からで、わけても人魚ものの連作を集めた『光の海』がよろしいようで。
 ま、そんなこんなで『flowers』でいくつか短篇を発表した後、初連載となった『坂道のアポロン』の2巻が出たわけだが、これは何だろうな、ちょっと変わったシチュエーションのお話が得意と思われてた人が、昔懐かしい学園ロマコメは今いかにしたら可能かを実験してる作品に見えるんだがどうか?
 舞台は1966年の九州。横須賀から転校してきた優等生西見薫は、ひょんなことから千太郎という不良と友達になってしまう。彼にすっかりペースを乱されてしまうが、なぜかそれが楽しい薫。同じクラスの律子の存在もやけに気にかかるが、千太郎と幼なじみと聞くと、ますます目が離せない。そのうち、律子の家の地下室で、薫は千太郎といっしょにジャズまで演奏することになってしまう……という話で、2巻では千太郎が年上の女の子を好きになったり、律子の隣家の淳兄ちゃんといっしょに外国人バーで演奏したりするとこまで進んでやがります。この千太郎ってのが、顔にキズあり、口には草をくわえてるという30年以上前の少年マンガに出てきた番長みたいな設定なんだけど、たしかに1966年が舞台だからしょうがないなー。絵もうまいし、心の動きの見せ方もさすがに堂に入ったもんで、さらにへーと思うのが、黒目を塗りつぶしちゃってるところ。今のマンガってとにかく読者がまず気にするのは目なんだから、とりあえず目が一番大事だってんで、光彩とかまで一生懸命描くのがハヤリだと思うんだけど、それにあえて逆行する度胸! 気にいったね! 目を黒く塗るためには、そのほかのところがきっちり表現できてなきゃいかんわけだけど、それができてるかどうか、読んで確かめてもらいたいものだ!
 とかいってたら、やまだないと『ビアティチュード』1巻と『ハルヒマヒネマ』が出ちゃったじゃないの!『ビアティチュード』の方は、クリクリ天パーのショータロー、同室の美少年フジヲ、紅一点の水島ユミ子に、藤田敏八や藤竜也か?みたいなテラさんほか、トキオ荘に集まる若きマンガ家群像を地道かつ熱く描いた傑作だ! 『モーニング・ツー』に載ってる確率はすごく低いが、それくらい気合いが入ってるんだと思うぞ! しかし、5段割ってのは初めて見たなあ。刷色が茶っていうのもイイネ! あと、「ビッグ虫」には大いに笑かしていただいた。
 『ハルヒマヒネマ』は、映画+ビデオ鑑賞日記ということだが……まあ、よっぽどのファン向けかな?







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