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評者◆内堀弘
古本屋ツアー・イン・ジャパン――二十一世紀の町なかに、まだそんな違和が残っている
No.2895 ・ 2008年11月22日




某月某日。来るときには気づかなかったのだが、用を済ませた帰り道に一軒の古本屋らしき店を見つけた。というのは、入り口の半分は蜜柑箱とかゴミ袋でふさがれていて、それでも硝子戸には「ご自由にお入り下さい」と貼り紙がある。中をのぞくと、積み上がった本の隙間に書棚が見える。たしかに古本屋のようなのだ。そういえば、ここはネットの「古本屋ツアー・イン・ジャパン」で紹介されていた店だ。彼は勇気を出してここに入っていた。
 このブログは、いわゆる古本系のブログの中ではダントツに面白い。書き手は、仕事の関係で毎日あちこちに出かけるようで、その町で見つけた古本屋をダッシュでのぞいて様子を伝える。そのライブ感がとてもいい。武蔵関、王子、下高井戸、大井町、中野など、ここに登場するのはごく普通の町の古本屋だ。
 下北沢では、店のシャッターは閉まっているのに、外壁に作りつけの棚にはびっしりと本を並べたままの店に出くわす。しまい忘れたのではない。無人の野菜販売所のように「代金はこちらに入れて下さい」と備え付けの小箱があるのだ。商魂たくましいのか、商売する気がないのか、微妙なところだ。
 千歳烏山ではそれこそ無人店舗に遭遇する。店の人が席をはずしていたのではなくて、そもそも店内にレジとか机とかそういうものがないのだ。棚には「万引きは人生を駄目にする」というスパイシーな警句に並んで「精算は向かいの不動産屋でお願いします」と貼り紙されていた。こんな、驚くべき(という形容詞は違うようにも思うが)古本屋がいくつも登場する。
 つくづく古本屋はどれひとつをとっても違うものだ。私は同業だけど、それでも理解できない店はいくつもある。淘汰もされず、もちろん繁盛もしてない。まるで、そこを流れる時間だけがこの世のらち外なのだ。
 二十一世紀の町なかに、まだそんな違和が残っている。十年後にこのブログを読めば、いや、今読んでも東京の町は妙に懐かしい。







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