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評者◆伊達政保
そんじょそこらの野外イベントとは訳が違う――9月13・14日の「天幕渋さ知らズ・木更津大作戦」
No.2895 ・ 2008年11月22日




 木更津港から橋を渡った港内に中の島公園がある。橋の最頂部(海面から25mもある)まで行くと、公園内に大鳥が描かれた大テントが見えた。ここで9月13・14日の2日間、「天幕渋さ知らズ・木更津大作戦」と銘打たれた公演が行なわれるのだ。「天幕渋さ」とは文字通り、何でもありのアングラ・フリー・ジャズ・オーケストラ「渋さ知らズ」のテント興行である。
 テント興行といっても、そんじょそこらの野外イベントとは訳が違う。全てが自前、そして自分達自身で行なうのだ。テント資材の調達から運搬、立て込み、舞台の設営(なんと平台は京大西部講堂に預けてあったものを車で運んできたという)、照明、音響、出し物の仕込みにいたるまで、一週間も現地に泊まり込んで作業が行なわれてきた。作業スタッフは「渋さ」メンバーのミュージシャン、舞踏やその他のスタッフを始め、「渋さ」に縁のある「発見の会」や「風煉ダンス」などのアングラ劇団のメンバーや彼らを支えるスタッフ、今回の公演に参加するバンドのメンバー、そして地元木更津の実行委員会のメンバーなどであり、ファンのボランティアも加わっていた。あらかじめ用意されている、ホールや野外ステージでの演奏ではなく、自らが演奏する場を自らで作り上げる、というのが「天幕渋さ」なのだ。
 テントの回りには芝居興行の幟を模して、参加したスタッフの名前を書いた色とりどりの無数の幟が立てられている。裏側では演劇関係のスタッフが、楽日のステージに使う緞帳を兼ねた巨大な出し物の制作に余念がない。テント内のメイン・ステージは準備の真っ最中、外の芝生広場に向けられたサブ・ステージは準備出来たよう。広場の後ろ側には、地元の若い人達の出店が並んでいる。橋を連なるように越えて観客が集まって来た。海上の公園でいい風が通る芝生の広場、季節はまさに中秋の名月、そして酒もある。まさに最高のロケーションだ。
 二日とも両ステージや広場を使って、ジャズありロックあり、どフリーありアフリカンありDJあり、地元のハワイアンやヨサコイ・ソーランなど多彩な演奏が繰り広げられた。テント内では、10月に上演される「風煉ダンス」の劇の予告編も演じられた。最後に巨大な緞帳代わりの仕掛けが持ち上がり、ステージ上に「渋さ」が現れると、テント一杯に詰めかけた観客は大歓声。ダンスや舞踏や映像が渾然一体となった演奏は、この「天幕渋さ」の集大成と言えるものだった。
 そして翌日には自分達によってテントのバラシが行われ、元の公園に戻されていった。こうした「天幕渋さ」という発想はどこから来たのだろうか。(続く)







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