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評者◆Y
忽然と消えた統制組織の内実――総力戦体制と作家たちの動向を追う
文学報国会の時代
吉野孝雄
No.2895 ・ 2008年11月22日




 歴史の闇のなかに忽然と消えてしまった組織がある。戦争にまつわる忌まわしい翼賛団体、戦後は長らく語られることのなかった文化団体のことである。大日本言論報国会、そして日本文学報国会がそれだ。本書は、この文学報国会と作家たちの動向をたどった一書である。
 大日本言論報国会と日本文学報国会は一九四二年、すなわちアジア・太平洋戦争勃発の翌年に設立された、言論統制のための官製機関だ。上部組織は、一九四〇年に近衛首相の構想のもと発足した大政翼賛会である。この二つの報国会の会長を務めたのが、徳富蘇峰だった。
 明治・大正・昭和と、日本近代の言論史において際立つスタンドプレーヤーだった蘇峰は、「文章報国」を率先し、戦争遂行の意志形成を推進するプロパガンディストの役割を担った。彼が会長をつとめた言論報国会と文学報国会の存在は、他の産業報国会などと違って、蘇峰の手足となって国民の思想や精神を操作する、きわめて危険な組織だったと著者はいう。改めて何がきわめて危険だったのかと問えば、それは文学や言論という、人間の思想や感情の表現にかかわる部分を統制する組織だからだ。
 文学報国会の創立にいたるまでには、総力戦体制に向かう日本の政治過程のみならず、作家たちの動向が重要な意味をもった。その前史には、どの...







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