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評者◆秋竜山
この横着者!、の巻
No.2892 ・ 2008年11月01日




 「まったく、悩みはつきないなァ……」「ヘーン、お前に悩みなんてものがあるのかい」「なんだと、このヤロー。俺を馬鹿にするな」。人は何を笑うかだ!! と、同じように、人は何を悩むかだ!! お前の悩みは実にくだらん!!と、いわれた時、なぐさめとはげましの意味を込めての場合もあるが、それに気づかず、「くだらないとは何だ!! くだらないとは……」なんて、ことになってしまうものだ。悩む人間をみるということは、実にむづかしい人間をみるような思いがしてくる。姜尚中『悩む力』(集英社新書、本体六八〇円)では、
 〈本書では、誰にでも具わっている「悩む力」にこそ、生きる意味への意志が宿っていることを、文豪・夏目漱石と社会学者・マックス・ウェーバーを手がかりに考えてみたと思います。〉(本書より)
 悩んでいる内はいいが、苦悩となると大問題である。
 〈生きることの意味、人生の意味、死ぬことの意味、愛することの意味…。じつにさまざまな、そして普遍的な問いかけが、彼らの書き残したものの中にあるのです。だから、彼らが百年前に抱き、悩んだ問いを、いまもう一度考える意味は大いにあるのではないかと思います。ちなみに、漱石やウェーバーのころ、こうした問いかけは「知識人の特権」のような悩みでした。しかし、いまやすべての人に情報や知識が開かれているのですから、悩みもより普遍化していると言えるかもしれません。〉(本書より)
 ちなみに、悩まなくてもいい人間までもが悩む時代になったということだろう。昔だったら「知識人の特権」階級にまかせておけばよかったのに……。みんな利口になったから悩まなくてはいけないのだろうか。昔とくらべて、みんな学校へ行くようになった。そのおかげで利口になった。そして苦悩しなければならなくなってしまったのである。楽天家は別だけど。いや、楽天家は楽天家としての悩みがあり、それを乗り越えていかねばならない!! なんて、叱られるかもしれない。
 〈漱石とウェーバーのことを考えると、彼らは悩む人であり、まじめな人でした。ウェーバーは漱石に較べると多少豪胆なところがありましたが、それでも精神を病んで病院に入ったと言われるほど命がけで考える人でした。漱石に至っては、笑っている写真が一枚もないほどまじめな文豪でした。厳密に言うと一枚だけ不自然な笑みの写真があるのですが、漱石はそれを一生の不覚としました。そのくらい、漱石には横着さというものがまるきり欠けていました。〉(本書より)
 私は、漱石は笑っている顔は、あまりにあわないと自分でわかっていて、まじめくさった顔がいい!! なんて、思っていたから、そんなシンコクぶった顔の写真ばかり残したのかと思っていた。文豪に、ふざけた写真など、あるまじきことであったのではないかと思っていた(自分を文豪と思っていたかどうかはしらないけど)。だいたい写真というものは笑い顔と相場がきまっているものだ。笑い顔がいい顔であるからである。本書では、ページの終りのころによると「悩みの果てに突き抜けたら、横着になってほしい」とある。はじめっから横着な人間は、どーしましょう。それが悩みだったりして……。







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