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評者◆ベイベー関根
黒田硫黄最新刊&黒田硫黄最新短編集――黒田硫黄『あたらしい朝』第一巻(本体五三三円、講談社アフタヌーンKC)、同『大金星』(本体五五二円、講談社アフタヌーンKC)
あたらしい朝 第一巻
黒田硫黄
大金星
黒田硫黄
No.2890 ・ 2008年10月18日




 前回ご紹介した大森しんや『恋ケ窪☆ワークス』の評判がよかったのか、続いて『恋ケ窪☆ワークスLTD』ってのが出ましたが、こちらははっきりいってオススメしません、不悪。
 さて、前置きもそこそこに、この連載を始めるにあたって、なんとしても取り上げておきたかったのが黒田硫黄だ。なんつうても、日本が世界に誇る天才ですからな。しかし、連載が始まったとたん、新刊が出なくなってしまうのだ。その間、入院したとか、編集者と決裂したとかいろんな噂を聞いていたが、『セクシーボイスアンドロボ』2巻から数えて、なんと5年半、ようやく黒田が新作を携えて戻ってきたのだ! しかも2冊! これが歓喜せずにいられようか!
 1冊目は、『アフタヌーン』に連載中の『あたらしい朝』1巻だ。第二次世界大戦勃発時のドイツで、道でヤバい金を拾ったふたりのチンピラ、マックスとエリックは、追っ手からしばらく身を隠すため、海軍に志願する。マックスはバナナ運搬船に中古の大砲を載せただけの仮装巡洋艦に乗り込み、流れ流れて日本へたどり着く。そこでエリックとめぐりあったまではよかったが、その直後、戦艦2隻は謎の大爆発を起こす。ふたりは無事ドイツに戻ることができるのか?
 という、またしてもかなりトッピな黒田ワールド!と思いきや、これが史実に基づいているというのだから、頭が下がる(なお、その芦之湯温泉には、ドイツ
軍の兵士たちが滞在のお礼として掘った防火用水池がまだ残っているとのこと)。海洋もの、戦争、歴史、ドイツ、と黒田好みの主題がぎっしり詰まった墨蹟黒々しい傑作なので、ぜひお買い求めいただきたい!
 2冊目は、『黒船』に継ぐ短篇集、『大金星』。うは、収録作全部読んでた。長篇になるのかと思ったら6回で連載が終わってしまった、ナマハゲみたいな(ところで、夏に秋田のナマハゲ記念館に行ってきたんだけど、ナマハゲ最高だなや!)異民族(〓)とのギャップありすぎな遭遇譚……いや、共生譚……いや、隣棲譚? 「ミシ」を始めに、アニメーションにもなった『茄子』のサイドストーリー「アンヘル」、居酒屋のねーちゃんがカッコよく銃をぶっ放す仮想世界ハードボイルド「居酒屋武装条例」、六本木ヒルズにインスパイアされた破滅SF「多田博士」、色遣いの素晴らしさが堪能できるスーパーヒューマンドラマ「Schweitzer」と、さまざまなタッチによるさまざまなジャンルの物語が楽しめる、まさにおトクな1冊だ!
 ついでだが、女の子以外の(つまり野郎の)主人公が、どいつもこいつもフツー看板にしねえだろってツラ構えなのも面白い。美男子って、たいていツマンないからね。そのほか、力の入った表紙の描き下ろしイラストや、カバーのブラチラサービスも見逃せないぞ! ……ま、ひとつだけいうと、ホントはA5判で読みたかったけどね。







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