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評者◆秋竜山
〈耳をすます〉、の巻
No.2890 ・ 2008年10月18日




 茂木健一郎『すべては音楽から生まれる――脳とシューベルト』(PHP研究所、本体六八〇円)では、〈耳をすまして、音楽を聴く。すべてはそこから始まるのである。〉と。〈なによりもまず、真摯に耳を傾けたい。〉と。音楽というものは、そこから始まっている、という。「いいなァ!! すばらしい言葉だ」と、思う。やっぱり、本質のすばらしさ、というか、よくわからないけど、〈音楽はあらゆる芸術をつかさどる。〉ものなんだなァ!! と、しみじみ思わざるをえない。芸術に弱いからいうわけではない。音楽に弱いからだろう。
 〈ある時釈迦の弟子が、繰り返し師に尋ねた。「人間は、死んだらどうなるのですか」「生まれる前、人はどこにいたのですか」「宇宙の果てはどうなっているのですか」「魂というものはあるのでしょうか」…。答えを求める弟子に、釈迦はこう言う。「お前の目の前に、毒矢が刺さって、もがき苦しんでいる男がいるとする。周囲の者が医者を呼ぶと、その男はこう言った。『治療は待ってくれ。その前に、この矢を射た男を捜してほしい。そして、聞いてくれ。どんな弓を使って、どんな毒の種類で俺を射ったのか、と』」お前は、この男をどう思う? そう問う釈迦に、弟子は「その男は馬鹿者だ。そんなことをしているうちに、死んでしまうじゃないか」と答えた。すると釈迦は、こう言った。「お前の質問も、同じことだよ」大切なのは、毒の正体を知ることではない。今そこにある苦しみをどう克服するかということだ。いくら考えても答えが出ないものを、どう克服するかということだ。いくら考えても答えが出ないものを、しつこく考え続けるのはやめなさい――。〉(本書より)
 釈迦の「無記」の思想であるという。
 〈だがそれは、いっさい口を閉ざすということではない。わからないことを前提とした上で、それでも語るということ。そこにはどんな意味があるのだろうか。沈黙に耳をすます時、聞こえるものはなんだろう。〉(本書より)
 耳をすます。
 〈静かに耳をすまして。〉(本書より)
 ということ。まず、耳をすますということ。そういう認識を忘れていることにハッ!!とさせられるものがある。本書では〈耳をすます〉ということについて書かれている。
 〈私にとって、「耳をすます」ことと、新しいことを「発想する」ことは、同義である。つまり、外界からの音を聴きながら、同時に、自分の内面に耳をすまし、なにがしかの意見や考えを発しているのだ。〉(本書より)
 どれほど、耳をすますことができるかだ。私は「これだけだ!!」と、明確にはわからないにしても、「まぁ、こんなものだろう今の俺にとっては……」なんて、すぐ投げ出してしまう。悪いクセというより、やっぱり、この程度というか、これだけのものか。耳をすませて、漫画のアイデアを練る。シーンとしたセイジャクの中から耳をすませて、アイデアを聴き出す作業のようにも思えてくるのである。浮ぶというより、聴こえてくるような感覚だ。耳をすます、と、セイジャクばかりではない。雑音というか、よけいな音ばかりが聴こえてくる。音楽でも、と思うのだが、その気配はない。いくら待っても聴こえてこない。そーいう環境なんだろう。そーいう環境なんだろう。そーいう下地がないのかもしれない。







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