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評者◆添田馨
表現の新たな実験劇場――「ポエトロゴス1」(首都大学東京現代詩センター発行)
No.2889 ・ 2008年10月11日




 詩文学に社会的インフラは必要か? ジャーナリスティックな視点からは、少数の商業雑誌を除き、この国にうまく該当するようなものは見当たらない。代わって同人誌や個人編集誌、最近ではネット上の特定サイトなどが、かろうじて詩のインフラ的役割を担っているのが実状である。短歌や俳句と違って、結社に類した組織を持たない現代詩であってみれば、その存在意義は時代によって流動化の波につねに曝される根無し草のそれであり、書き手個々人の運命とともに破滅するならしてもらって一向に差し支えない、そんな無頼な文芸であって欲しいというのが、私の従来からの願望ではあった。
 だが一方で、やはり再生産のための場が、つねに詩の本質という的を外さない形で、社会のどこかに根付いて欲しいという思いがまったくない訳ではない。必要性の見地からひとつ考えられるのは、競争ならぬ“共創”的時空間としての学校のようなものだ。
 首都大学東京現代詩センターが発行する「ポエトロゴス1」の後記で、瀬尾育生はこう書いている。「二〇〇七年、福間健二の発案で私たちは「現代詩センター」というものをつくった。福間と私は首都大学東京・都市教養学部・都市教養学科・人文社会系・国際文化コース・表象言語論分野というところに属しているので、「現代詩センター」もこの専攻のなかに作られている。(中略)詩について理論的に考える新しい書き手たちのメディアを、こういう形ではじめてみようと思った。」
 三年前の「詩の実作」講座から始まったというこの流れは、さらに今年5月には冊子「長い火曜日」という、この授業の参加者らによる作品集へと結実するに至っている。商業誌でも同人誌でもないこうした表現の新たな実験場は、いまだ形の見えない詩の社会的インフラに、じつは最も近い位置にあるのかもしれない。







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