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評者◆井出彰
小説らしい小説の喪った何ものか――この小説の割れ目から垣間見られる光景
ある意味、ホームレスみたいなものですが、なにか?
藤井建治
No.2889 ・ 2008年10月11日




 深夜、酔って帰る。月明りの路を歩きながら見るびっしりと詰まり、並んだ家並みは、みな静まりかえっている。屋根があって外壁に包まれ、庭に手入れされた植木が四、五本植えられ、門がある。一様に似た家々の中は、今や祖父と祖母、勤めから帰った父親を迎えて母とその子供たちが、夕食をすませ、団欒が終り、今や明日に向って静かに眠りに入ったかもしれない。否、子供たちの中には受験をひかえてまだ起きている者もいるかもしれない。いずれにしろ、その外枠を見る限りでは、中で、さっきまでにこにこ談笑していた娘が、いきなり寝入ったばかりの父親の胸の上に乗って刃物を振りあげ血の海にしたり、一日中引きこもっていた孫が、いつも小遣いをねだる、今度ばかりは断ったといっては、いきなり祖父母を絞め殺す等々、そんな事件が、ツンと澄まして並んでいる家々の、どこか一軒で行なわれているなど、誰にも予想できない。
 この小説の舞台、比良山さんの家も外から見れば何の変哲もない平凡な一軒に過ぎない。ところが主人公の文也は大学二年生のときから、もう三年間も引きこもっている。妹の結美の方も中学生のときにイジメにあってから、グレてしまって男友達のアパートにでも転がり込んでいるのか滅多に帰ってこない。母親は優等生で、すべてをかけてきた息子が...







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