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評者◆伊達政保
分離独立運動とそれへの大弾圧についてもしっかりと表現されていた――北米唯一の城塞都市ケベックで開催されたサマー・フェスティバル
No.2888 ・ 2008年10月04日




 7月7日から一週間ばかり、カナダ・ケベック市で毎年行われるサマー・フェスティバルに、日本から出演する「渋さ知らズ」に同行して出かけてきた。今年はケベックにフランス人が砦を築いてから400周年ということで、より大掛かりに催されているようだ。
 ケベックと聞いて、オイラ真っ先に浮かんできたのはFLQ(ケベック解放戦線)のことだ。1970年10月フランス系住民が多数を占めるケベック州のカナダからの分離独立を目指すFLQは、カナダ政府の弾圧に対抗して戦術をエスカレート、要人の誘拐、殺害までに及んだ。カナダ政府は戦時非常事態を宣言、あらゆる分離独立派に対する無差別の大弾圧を行ないこれを鎮圧しようとした。当時このニュースに接した時、まさか先進国カナダで革命闘争ならいざ知らず、イギリス系住民支配に抗してフランス系住民が民族独立闘争を起こすなんて思いも寄らず、本当にびっくりしたことを覚えている。同じ北米といってもアメリカ合衆国の状況にしか関心がなく、カナダを刺身のつまぐらいに考えていた歴史認識の無さを痛感させられたのだ。その後、分離独立派は合法路線によってケベック州議会の多数を獲得、フランス語を唯一の公用語と定めるなど着々と、殆ど一国二制度とも言える体制を作り出し現在に至っている。
 北米唯一の城塞都市ケベックは、ヨーロッパの都市を彷彿とさせるその歴史的文化的景観ゆえにユネスコの世界文化遺産ともなっている。サマー・フェスティバルは、その市内に設営された、2万人以上収容出来るものから500人規模までの5つの野外ステージ、劇場やクラブそしてパブなどの屋内ステージ、ストリートなどで繰り広げられる音楽フェスティバルなのだ。
 音楽ジャンルもロックやジャズはもちろんのこと、シャンソン、ポップス、ブルース、ヒップホップ、ワールド・ミュージックとして括られるトラディショナル、タンゴ、サンバ、アフリカンなど何でもありで、大道芸やパフォーマンスも行われている。日にちは異なるが、メイン・ステージであのザ・ベンチャーズやシャンソンの大御所シャルル・アズナブール、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックのイエスが公演するフェスティバルなんて、想像も出来なかった。「渋さ」もストリート公演では吹奏楽ハプニング、コンサートではロック・ジャズとジャンル分けされていた。
 港近くの400周年特設会場でコンサート終了後、工場の巨大な外壁を使ってアニメや実写によるケベック400年史の映像と音のコラボが行なわれた。その中で、分離独立運動とそれへの大弾圧についても、しっかりと表現されていた。







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