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評者◆鴻農映二
済州島の名所を詠みロングセラー――李生珍の詩集『いとしの海、城山浦』
No.2887 ・ 2008年09月27日




 詩人、李生珍(イー・センジン)のロングセラー詩集『いとしの海、城山浦』が、このほど、装いも新たに、図書出版ウリ・クル(訳。私たちの文章の意味)から出版された。1978年に初めて世に出たこの詩集は、これまで33刷を重ね、30年ぶりに別の出版社に版権が移ったもの。81篇の詩から成るが、詩の朗読会で引っ張りだこの詩集だ。朗読コンテストでは、聞き飽きたから、それ以外のものにするよう、と規制されるほどの人気である。どれも、5行から10行程度の詩なので、朗読者は、自分の好みで、様々につなげる。だから聴衆は、かなり長めの詩と錯覚している。冒頭が「城山浦では」と始まるので、くっ付いているように思い込んでしまうのだ。たとえば「万年筆」という詩は、「城山浦では/観光で訪れた若い/社員が一人/万年筆に/海の水を/溜めている」という五行詩。これに、詩「山」の、「城山浦では/いつか山が海に降服し/山も/海のように横たわろう」の四行を繋いでも違和感はない。更に、詩「絶望」の、「城山浦では/人は絶望をこしらえ/海は絶望を飲み込む/城山浦では/人が絶望を歌い/海がその絶望を聴く」と続けてもよいし、或いは、詩「みな捨てよ」の「城山浦では/財布を草原に放り投げ/海が命じるまま/服を脱ぐ」に繋げてもよい。どちらを選ぶにせよ、耳に残るのは、「城山浦では」というリフレインである。城山浦は、済州島東海岸の景勝地で、日出峰が有名だ。李生珍詩人は、この詩集で2001年に済州島名誉道民となった。かれは、1955年に処女詩集『野兎』を出したが、それだけでは認められず、『現代文学』誌で、金顕承の推薦を受け、詩人としての市民権を獲得した。最近の『ヴァンゴッホ“汝も狂え”』は、30冊目の詩集となる。かれは、「島の詩人」がキャッチフレーズの一つで、約二千に及ぶ国内の島を踏破中だ。







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