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評者◆秋竜山
面白くないから面白い!、の巻
No.2884 ・ 2008年09月06日




 昔は「一枚マンガ」。今は「ヒトコマ・マンガ」。どちらの呼び方が正しいのか。昔は「一枚マンガ」という呼び方にこだわっていたように思う。マンガ家自身が、そのように呼んでいた。こだわりというものは恐ろしいもので、「ヒトコマ・マンガですね?」と聞こうものなら「いや、一枚マンガです」と、間違ったいい方を訂正されるように言われたものであった。今は、一枚マンガという呼び方をする人がすくなくなったようだ。昔の人がいなくなったせいか、どうかはわからない。「ヒトコマ・マンガ」とか「ヒトコマ物」とかいう。一枚物とヒトコマ物との違いはあるのだろうか。ある!! といえばある。そして、ない!! といえばない。実にあいまいであるようだ。無人島が正しいか。孤島が正しいか。無人島マンガとか、無人島物。孤島マンガとか孤島物。「正式には無人島と呼ぶべきだろう」なんて人もいたりする。私は無人島マンガをバカみたいに描き続けている。そんなに描いてどーするつもりだ!! というような声が聞えてきそうだ。私は無人島マンガと言ったり孤島マンガと言ったりしている。どっちが正しくて、間違っているのかしらないが、ずっと孤島マンガと呼んで描き続けていたが、いつの頃だったか、急に「無人島マンガ」に変わってしまった。どうして、なのか、よくわからないが「無人島マンガ」と言ったほうがピッタリのような気がしてきたからだ。それでも、「私は無人島マンガと呼ぶのが好きでありまして、その孤島マンガにおける無人島の住人が…」なんて、いかに、どっちでもいい、定まっていない証拠だ。アメリカのマンガに刑務所マンガという分野が確立されているようだ。と、いうことは、数え切れないほどの作品があるということだ。そして、その呼び方であるが、果して刑務所マンガでよいのか。監獄マンガが正当な呼び方ではないだろうか。と、いうと、囚人マンガこそが正しい…。なんて、ことにもなってくる。マンガで多い場面は、小さな鉄格子が描かれた独房における囚人の生活模様とでもいおうか。これは、無人島における漂着した島の住人と共通点もある。独房マンガでは時折り看守がのぞいたりするが、無人島マンガでは、ボートで救助らしき光景もあったりする。石原伸司『ムショの中の怖くてオモロイ人々』(大和書房、本体七〇五円)では、「懲役の達人」だから書ける驚愕の裏話の書き下ろし、という。
 〈ちなみに、塀の中で生活した時間をすべて合わせると、実に三〇年近くにもなる。(略)刑務所を描いた本はいくつか書店に並んでいるが、どの本を見てもマニュアル主体で刑務所の表面しか触れていない〉(本書より)
 刑務所物は面白い。面白おかしく書いてあるから面白いのか。だとしたら、面白おかしく書く文章力がなかったら、ちっとも面白くない刑務所模様となってしまうだろう。刑務所という所は本来ちっとも面白くない所だと思う。それが、面白いとなる。面白くないから面白い。笑えるということは、笑えない所に発生するもののようだ。「アハハ……ちっとも面白おかしくねえや!!」というのが笑いの正体かもしれない。他人ごとだから笑ってしまうのだろう。







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