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評者◆伊達政保
理論的検証ばかりではなく、現場で行動した多くの人々の記録が重要なのだ――『情況』6月号の緊急特集「『実録・連合赤軍』をめぐって」と同誌1973年5月号「連合赤軍の軌跡‐獄中書簡集」
No.2884 ・ 2008年09月06日




 手元に二冊の総合誌『情況』(情況出版)がある。一冊は今年(2008)六月号緊急特集「『実録・連合赤軍』をめぐって」で、映画論から連合赤軍、京浜安保共闘、赤軍派等当事者達の証言、若松孝二・西部邁・足立正生の鼎談、長崎浩・永原豊の対談を収録し、歴史的資料も含め、映画ばかりでなく多方面から連合赤軍を論じている。編集部助手として足立正生が関わったことにもよるのだろう。もう一冊は1973年の五月号「連合赤軍の軌跡‐獄中書簡集」。永田洋子を始めとする各メンバーおよび日共左派、赤軍派の事件後の総括論議、森恒夫自死までの書簡、裁判を巡る丸山照雄・小沢遼子・蔵田計成・菅孝行・西山逸・穂坂久仁雄の討論、資料として日共左派川島豪、赤軍派塩見孝也の論文などが納めてある。 この二冊の間の、35年という時間経過において、一部の論者の変化のなさ硬直した思想性、あるいは変化がゆえの無責任な思想性や逆行する思考に、オイラ愕然としてしまったのだ。その一方で、映画を切っ掛けとして当事者が、以前とは異なり、ある程度客観的にそして率直に、自己総括を含めた運動の経過を語り始めている状況も伺える。オイラと同年に大学に入学した、京浜安保共闘女性活動家へのインタビューなど、一学生が全共闘運動的ノリから党派の活動に関わるまでの経過を率直に語っており、当時高校生活動家だった府川充男曰く「何らかのマグマが地底で烈しく動いて」いた、同時代の雰囲気をよく伝えているのだ。  その硬直した思想性とは旧・新左翼共々、革命における「党」の位置付けである。レーニン主義前衛党理論は、現実から乖離した観念論的革命論と結び付いた時、無謬の党、絶対神として立ち現れる。連合赤軍事件も革共同や革労協の内ゲバも、みなそこに原因があると考えられる。35年経っても「党」という概念から逃れられない思想や運動、状況に対する具体的な運動から理論や組織論が形成されるのではなく、理論や組織論が正しければ運動が成立し革命が成就するという逆立ちした論理、そうした論理こそが、日本の新左翼の衰退を招いたのだ。
 しかし実際は、府川氏が言うように三派全学連‐全共闘が大衆的に切り開いた行動を、あたかも党派の理論により闘われたものとする「歴史の捏造」もあったという。その意味からも理論的検証ばかりではなく、現場で行動した多くの人々の記録が重要なのだ。そうした中の一人の本が出た。『ゲバルト時代Since1967~1973 あるヘタレ過激派活動家の青春』中野正夫著(バジリコ)。高校時代から現場闘争をフルエントリーしてきた末端活動家の〈記録〉である。とにかく面白い。







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